2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「シアワセノジョシュ」
「はー。幸せになるにはどうしたら良いのかな」
物語の始めはそんな一言から
一匹の、自分を大事にできない
兎のシンは溜息をつき
外を眺めていました
そもそも幸せってなんだろう
お金があること?
女の子にもてること?
分からない事を考えて
ただただ頭を抱えていました
外に散歩にでたある日
池の側で一休み
何時の間にか、うとうとしていたら
空からひらひら一枚の羽
シンはその羽を手に取りました
異様に柔らかく綺麗な羽
鳥達の羽とは違うそれに
なんだか不思議に思い
その羽を大事に包み持ち帰りました
その夜、シンが眠っていると
鼻を何かがくすぐるので
「へっくしゅん!」
おもわずくしゃみをして
シンは目を覚ましました
そこには一匹の妖精がいて
よく見るとその妖精の羽は
昼に拾ったあの羽に似ています
もしかしたらと思い
シンは妖精に聞きました
「この羽、君の?」
妖精は軽く頷いて
ペコっと会釈をして言いました
「なるほど、そう言う事。
あんたシン?どうも、僕はイチ。」
無愛想で乱暴な口ぶり
とても想像や話で聞く妖精ではなく
シンは呆気にとられました
シンは続けて、たんたんと
自分が妖精だということ
その持ってる羽が自分のである事
なぜここにきたのか
これから何をするのか
それらをざっくばらんに説明しました
そして、そこから先は文句の嵐
羽を探すのに苦労したとか
それは、あんたが持ち帰るからだとか
部屋が汚くて羽が汚れたとか
終いには、あんたは酷い有様だと
シンは頭にきて言葉を無視して
布団に潜ると目を閉じました
明日には夢だったとなるように
しかし、訪れた朝に
そこにいたのは無愛想なままの
イチでした
溜息をつくシンに
「部屋の掃除したら?
ゴミはあんたの家族?大家族だこと」
イチは嫌味をたんたんと言いました
イライラはしましたが
返す言葉もないので
しぶしぶシンは掃除を始めました
溜まったゴミはゴミ袋へ
埃を雑巾で拭いてピカピカに
すると、イチがある場所を指差し
ここを掃除しろと指示をします
そっぽ向いていてもしつこく言うので
たまりかねてシンは向かいました
掃除をすると、そこから
昔の彼女との写真がでてきました
大好きだった思い出がささります
シンは頭にきて
「なんのつもりだ?
こんなもの見せておもしろいのか?」
と怒鳴りつけました
イチはまるで他人事の様に知らんぷり
シンは気を悪くしながらゴミ袋に
その写真を放り込みました
掃除を済ましたのは昼過ぎで
シンは街に夕飯を買いに行くことに
するとまた、イチが言いました
「ゴミはファンデーション?
なるほど、伸ばしっぱなしの毛並み
お似合いだ。おみごとなセンスだ」
シンは鏡を見ると確かにで
言い方に怒りは覚えたものの
ハサミを手にお風呂に向かいました
長く伸びた毛並みを揃える
チョキチョキ、ぱさっ
チョキチョキ、ぱさっ
その時、手を滑らせてしまい
チョキ、びっ
指先を切ってしまい流れる血
お風呂上がりに絆創膏
イチはそれを何食わぬ顔
本当に嫌な奴だと思いながら
家を出ました
さっさと買い物を済ませて
家に戻ると一枚の手紙がありました
それはお母さんからの手紙でした
シンはたいして読まずに
その手紙を机の中にしまいました
それを見たイチは
「親の心子知らず。
あんた教科書載せれる位の見本だわ。
おめでとう、有名人の仲間入りだ」
いい加減頭にきてシンは言いました
「お前に俺の何が分かる?
ふざけるな。読むだけ無駄なんだよ」
するとイチは冷ややかに
「わかんないね、あんたの事なんか。
でも、来たら読む、読んだら返す。
子供でもありがとうの一つは書く。
その位は僕でなくてもわかるよ?」
言い返すのも馬鹿馬鹿しくなり
机からハガキをだすと
母さんありがとう
僕は母さん手紙が大好きです
また書いて来てね
楽しみにしてます
と書いてイチに叩きつけました
イチは相変わらずの無表情で
そのハガキを見つめていました
そして、簡単な夕食を済まし
夜も更け、布団に潜りました
散々な一日だった
何が幸せだ
イチは嘘つきだ
幸せなんかするつもりなくて
ただ自分を馬鹿にしに来たんだ
追い出してやろう
それがいい
ばっと起き上がると
イチを指差しシンは言いました
「出ていけ!さっさと消えてくれ!」
腕を振り回しまし、追い払おうと
大きく手を振り上げた、その時
ふらっ
あれ?
ぱたん。
気づくとベットに倒れ込んで
シンは息ができない位の
苦しみに襲われていました
イチが月を見て
「時間か。ぴったりだな。」
と呟きました。
シンは苦しみの中、必死に
「どういう事?」
と言葉を吐き出しました
イチが言うのは
あんたは今日死ぬ予定で
分かってなかったろうが
大病持ってたんだと
あんたに伝えたいことがある
幸せが何かって?
ちょっとだけ幸せになれたらそれでいいじゃない
送らない手紙を今日書いた
今日を最後の手紙をちゃんと書いた
で、あんたは、全部知らなくなるかもしれない
その前に思い出してほしかった
忘れ物なんか、しないで欲しかった
あり得ないかもしれないけど
一番遠いもの思い続けられるように
今より先にちょっとだけ
幸せになってくれればいいなって
不思議と死ぬ怖さはシンになくて
なんとなく温かい気持ちになりました
ゆっくり目を閉じると
イチの羽の残像がいくつも宙を舞っていました
そうして、記憶を閉じ込める様にまぶたを閉じて、意識が遠くなるのを感じました
最後の気力を振り絞ってシンは言いました
「なあ、母さんの手紙読んでくれないかな?」
目を閉じたシンに聞こえた
母さんの手紙を読むその声が
とても優しく、温かく聞こえたのは
きっと、ちょっとだけの人より幸せになれたから*
ぱたん。
白い兎は言いました
「なんだか深い本だね
幸せは形がたくさんあるよ?
って事なのかな?」
黒い兎は言いました
「かな。でも、死ぬ間近の事でしょ?
まだよく分からないしね。
僕は単純にプラスの幸せのがいいな」
二匹は顔を見合わせて
そりゃそうだと頷きました
そして二匹は幸せな事を
お互いに出し合いました
美味しいご飯を食べれる事
元気にいられる事
お金がある事
大好きなクルミがある事
布団がふかふかな事
そして二匹一緒にいれる事
単純だけど大事なこと
なんだか再確認できたようでした
ふと、白い兎が聞きました
「ねえ、与える側のイチの幸せって?
死んじゃうのが分かってたのになんだったんだろ?」
うーん、分からない
多分イチはそういうのは
考えてないんじゃないかな
黒い兎は首を傾げました
黒い兎は言いました
「でも、イチだからこそシンは
幸せだったんだと思うよ。
だってほら。」
絵本の一番後ろに作者が書いていたのは
辛(シン)+一(イチ)=幸(シアワセ)
黒い兎は白い兎の頭を撫でて
「二匹で成り立つ幸せ。
僕がイチなら
きっとこれで十分幸せ。」
白い兎もなるほど、うんうんと頷いて
イチが気づいてたら良いと思いました
ただ、あの無愛想と口の悪さが嫌だと
ちょっとだけ悪口を言いました
白い兎と黒い兎
二匹いつも一緒で幸せ
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「シアワセノジョシュ」
「はー。幸せになるにはどうしたら良いのかな」
物語の始めはそんな一言から
一匹の、自分を大事にできない
兎のシンは溜息をつき
外を眺めていました
そもそも幸せってなんだろう
お金があること?
女の子にもてること?
分からない事を考えて
ただただ頭を抱えていました
外に散歩にでたある日
池の側で一休み
何時の間にか、うとうとしていたら
空からひらひら一枚の羽
シンはその羽を手に取りました
異様に柔らかく綺麗な羽
鳥達の羽とは違うそれに
なんだか不思議に思い
その羽を大事に包み持ち帰りました
その夜、シンが眠っていると
鼻を何かがくすぐるので
「へっくしゅん!」
おもわずくしゃみをして
シンは目を覚ましました
そこには一匹の妖精がいて
よく見るとその妖精の羽は
昼に拾ったあの羽に似ています
もしかしたらと思い
シンは妖精に聞きました
「この羽、君の?」
妖精は軽く頷いて
ペコっと会釈をして言いました
「なるほど、そう言う事。
あんたシン?どうも、僕はイチ。」
無愛想で乱暴な口ぶり
とても想像や話で聞く妖精ではなく
シンは呆気にとられました
シンは続けて、たんたんと
自分が妖精だということ
その持ってる羽が自分のである事
なぜここにきたのか
これから何をするのか
それらをざっくばらんに説明しました
そして、そこから先は文句の嵐
羽を探すのに苦労したとか
それは、あんたが持ち帰るからだとか
部屋が汚くて羽が汚れたとか
終いには、あんたは酷い有様だと
シンは頭にきて言葉を無視して
布団に潜ると目を閉じました
明日には夢だったとなるように
しかし、訪れた朝に
そこにいたのは無愛想なままの
イチでした
溜息をつくシンに
「部屋の掃除したら?
ゴミはあんたの家族?大家族だこと」
イチは嫌味をたんたんと言いました
イライラはしましたが
返す言葉もないので
しぶしぶシンは掃除を始めました
溜まったゴミはゴミ袋へ
埃を雑巾で拭いてピカピカに
すると、イチがある場所を指差し
ここを掃除しろと指示をします
そっぽ向いていてもしつこく言うので
たまりかねてシンは向かいました
掃除をすると、そこから
昔の彼女との写真がでてきました
大好きだった思い出がささります
シンは頭にきて
「なんのつもりだ?
こんなもの見せておもしろいのか?」
と怒鳴りつけました
イチはまるで他人事の様に知らんぷり
シンは気を悪くしながらゴミ袋に
その写真を放り込みました
掃除を済ましたのは昼過ぎで
シンは街に夕飯を買いに行くことに
するとまた、イチが言いました
「ゴミはファンデーション?
なるほど、伸ばしっぱなしの毛並み
お似合いだ。おみごとなセンスだ」
シンは鏡を見ると確かにで
言い方に怒りは覚えたものの
ハサミを手にお風呂に向かいました
長く伸びた毛並みを揃える
チョキチョキ、ぱさっ
チョキチョキ、ぱさっ
その時、手を滑らせてしまい
チョキ、びっ
指先を切ってしまい流れる血
お風呂上がりに絆創膏
イチはそれを何食わぬ顔
本当に嫌な奴だと思いながら
家を出ました
さっさと買い物を済ませて
家に戻ると一枚の手紙がありました
それはお母さんからの手紙でした
シンはたいして読まずに
その手紙を机の中にしまいました
それを見たイチは
「親の心子知らず。
あんた教科書載せれる位の見本だわ。
おめでとう、有名人の仲間入りだ」
いい加減頭にきてシンは言いました
「お前に俺の何が分かる?
ふざけるな。読むだけ無駄なんだよ」
するとイチは冷ややかに
「わかんないね、あんたの事なんか。
でも、来たら読む、読んだら返す。
子供でもありがとうの一つは書く。
その位は僕でなくてもわかるよ?」
言い返すのも馬鹿馬鹿しくなり
机からハガキをだすと
母さんありがとう
僕は母さん手紙が大好きです
また書いて来てね
楽しみにしてます
と書いてイチに叩きつけました
イチは相変わらずの無表情で
そのハガキを見つめていました
そして、簡単な夕食を済まし
夜も更け、布団に潜りました
散々な一日だった
何が幸せだ
イチは嘘つきだ
幸せなんかするつもりなくて
ただ自分を馬鹿にしに来たんだ
追い出してやろう
それがいい
ばっと起き上がると
イチを指差しシンは言いました
「出ていけ!さっさと消えてくれ!」
腕を振り回しまし、追い払おうと
大きく手を振り上げた、その時
ふらっ
あれ?
ぱたん。
気づくとベットに倒れ込んで
シンは息ができない位の
苦しみに襲われていました
イチが月を見て
「時間か。ぴったりだな。」
と呟きました。
シンは苦しみの中、必死に
「どういう事?」
と言葉を吐き出しました
イチが言うのは
あんたは今日死ぬ予定で
分かってなかったろうが
大病持ってたんだと
あんたに伝えたいことがある
幸せが何かって?
ちょっとだけ幸せになれたらそれでいいじゃない
送らない手紙を今日書いた
今日を最後の手紙をちゃんと書いた
で、あんたは、全部知らなくなるかもしれない
その前に思い出してほしかった
忘れ物なんか、しないで欲しかった
あり得ないかもしれないけど
一番遠いもの思い続けられるように
今より先にちょっとだけ
幸せになってくれればいいなって
不思議と死ぬ怖さはシンになくて
なんとなく温かい気持ちになりました
ゆっくり目を閉じると
イチの羽の残像がいくつも宙を舞っていました
そうして、記憶を閉じ込める様にまぶたを閉じて、意識が遠くなるのを感じました
最後の気力を振り絞ってシンは言いました
「なあ、母さんの手紙読んでくれないかな?」
目を閉じたシンに聞こえた
母さんの手紙を読むその声が
とても優しく、温かく聞こえたのは
きっと、ちょっとだけの人より幸せになれたから*
ぱたん。
白い兎は言いました
「なんだか深い本だね
幸せは形がたくさんあるよ?
って事なのかな?」
黒い兎は言いました
「かな。でも、死ぬ間近の事でしょ?
まだよく分からないしね。
僕は単純にプラスの幸せのがいいな」
二匹は顔を見合わせて
そりゃそうだと頷きました
そして二匹は幸せな事を
お互いに出し合いました
美味しいご飯を食べれる事
元気にいられる事
お金がある事
大好きなクルミがある事
布団がふかふかな事
そして二匹一緒にいれる事
単純だけど大事なこと
なんだか再確認できたようでした
ふと、白い兎が聞きました
「ねえ、与える側のイチの幸せって?
死んじゃうのが分かってたのになんだったんだろ?」
うーん、分からない
多分イチはそういうのは
考えてないんじゃないかな
黒い兎は首を傾げました
黒い兎は言いました
「でも、イチだからこそシンは
幸せだったんだと思うよ。
だってほら。」
絵本の一番後ろに作者が書いていたのは
辛(シン)+一(イチ)=幸(シアワセ)
黒い兎は白い兎の頭を撫でて
「二匹で成り立つ幸せ。
僕がイチなら
きっとこれで十分幸せ。」
白い兎もなるほど、うんうんと頷いて
イチが気づいてたら良いと思いました
ただ、あの無愛想と口の悪さが嫌だと
ちょっとだけ悪口を言いました
白い兎と黒い兎
二匹いつも一緒で幸せ
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2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「カゾクイロ」
ある小さな家に一匹のおばあさん兎が住んでいました
おばあさん兎は4匹の子兎と一緒に住んでいました
みんなお母さんもお父さんもいません
早くに両親を亡くしたり、家を飛び出したり
一匹で暮らしていたけれど、さみしくなったり
なぜか理由が分からないままの兎も
皆まだ小さいのに、理由があっておばあちゃん兎の家に住んでいます
「おばあちゃん、おばあちゃん。」
なきべそをかいてやってきたのは白兎のチャムです
おばあさん兎は聞きました
「どうしたい、チャム?そんなに目を真っ赤にして」
チャムはその涙をごしごし拭いながら答えます
「今日とっても大事に皆で育ててきた花が枯れちゃったんだ。
僕とってもその花が大好きで、その花もう見られないって思ったら悲しくて」
手には枯れた花が植えられた鉢が一つ
おばあちゃんは頭を撫でると
「うんうん、なんていい子なんだ、お前は。
わたしはあんたが教えてくれなかったらきっと、花は咲いたら枯れるもの。
ものには全て終わりがある、それが当然。
そう思っていただろうて。お前の優しい気持ちがわたしに命の大事さを教えてくれた」
おばあちゃんはそう言うと花の根をもう一度土の中に植えるように言い
チャムはその通りに庭に植えてあげました
「おい、おばあ、おーい、どこにいんだよ」
いらいらしながらやってきたのは黒兎のガル
おばあさんは聞きました
「どうしたい、ガル?そんなに目くじらたてて」
ガルは握った拳をぐっと握り締めて答えます
「俺が乱暴だから、おばあの家からでてけって言われたんだ。
一緒に住んでるあいつらに言われるならまだしも、違う家の奴にだぜ?
むかついたからケンカしてたら、そいつらの親がでてきてさ
お前はあの家の子供でもないくせに、って。」
震える肩を軽く抱くと
「うんうん、なんていい子なんだ、お前は。
わたしはあんたが教えてくれなかったらきっと、親は血が繋がってるもの。
家族にはかならず証拠が必要、それが当然。そう思っていただろうて。
お前の強い気持ちがわたしに家族の形を教えてくれた。」
おばあちゃんはそう言うと、外にこれを吊るしておいで、とドングリを五つ渡しました
ガルはその通りに玄関に飾り付けました
「はぁ。おばあちゃん。おばあちゃん」
消えそうな小さな声はブチ兎のオロ
おばあちゃんは聞きました
「どうしたい、オロ?そんな下ばっか向いて」
オロはその場にしゃがりこんで答えます
「もうよく分からないの。周りの兎は色々できるのにさ。
わたしは何をやってもうまく行かない。もうやだよ。」
おばあちゃんはオロを立ち上がらせて抱きしめると
「うんうん、なんていい子なんだ、お前は。
わたしはお前がそれを教えてくれなかったらきっと、自分が出来るのを当たり前。
誰かと比べることなんて必要ない、出来るんだから当然。そう思っていただろうて。
お前のまっすぐな気持ちがわたしに自分を知ることを教えてくれた」
おばあちゃんはそう言うと、これを皆に渡しておくれと、羽根の髪飾りを手渡しました
オロはその通りにガルとチャムに羽根を渡しました
「ふふふーふふ。るんるん」
鼻歌混じりでのん気なのは一番小さな兎のアム
おばあちゃんは聞きました
「どうしたい、アム?そんなニコニコしちゃって」
アムは軽く首をかしげて答えます
「んー?僕はいつも一緒だよ?
今日もお空が綺麗だったなーって」
そのままアムは鼻歌を歌いながら部屋に戻っていきました
おばあちゃんは首をかしげながら
「あの子はいっつも幸せそう。
どんな小さなことにも幸せを感じれて
教えることなんかより教えてもらうことのが多いみたい。
あの子の不思議な気持ちでわたしは今更だけど育ててもらってる気分だわ。」
おばあちゃんはそう言うと、オロに髪飾りを渡してあげてと言い
オロは言うとおり、アムに髪飾りを手渡しました
その晩、テーブルを囲んで四匹と食事
チャムはちっちゃく食べ物を切って小さなお口へ
ガルは一口でぺロッと食べておかわりを
オロは周りを見ながら食べるものを選んで
アムはのんびりマイペースにもぐもぐ
んな四匹に囲まれた食事がおばあちゃんにはとっても幸せでした
そして夜も老けた頃
アムが皆を呼び出しました
おばあちゃんを含め四匹が集まると
「皆集まったね、よーし」
そう言ったとたんアムの体がピカピカと光りだしました
四匹は大慌て
おばあちゃんも目を丸くしていると
アムの背中に大きな羽根が生えたのです
アムは言いました
「チャムもガルもオロも皆、とってもいい子。
でも誰にも教えてもらうことができなくて、いいところだって。
おばあちゃんも昔同じように、たくさん苦労してたよね。
僕が来る頃はまだ自分のことで精一杯で。
でも、今は違う。
おばあちゃんも教えてあげて、そんで教えてもらって。
僕の役目ももうおしまい。
最後に皆にプレゼント。いーくーよー」
アムがえい、っと羽根を震わすと
外の庭にチャムの好きだった花が満開
外のどんぐりは金の鐘になって、チリチリリン
羽根飾りが皆の左耳でキラキラ光ると
そこだけブチに羽根の模様に毛色が変わりました
「これで皆家族だよー」
アムはにっこり微笑むと玄関を開けました
おばあちゃんは近寄って、ありがとうと手を振りました
次の日になり
アムのいないテーブルでガルは言いました
「アムの奴、もう帰ってこないのかな?」
おばあちゃんはにっこり笑って一言
「んーん、帰ってくるわよ、家族だもの。
だって、あの子の左耳。飛び立つ時、私たちと同じ、羽根の模様になってたもの。」
ぱたん
二匹は本を閉じるとお互いの顔を見合いました
「家族かー。君はどんな家族がいい?」
白い兎は言いました
「わたしは、なんでも好きな事をさせてあげたいなー。」
黒い兎は思いました
今まで二匹の間でやっちゃいけないこと、あまり無かったけれど
子供や家族が出来たらきっとそうもいかなくなるんだろうな、って
独り占めできる期間が終わったらきっと変ってしまうのかな、って
白い兎の手をつかむと、黒い兎は言いました
「ねぇ。ちょっとお散歩しよ」
玄関を出て色んなところへ二匹はお散歩しました
思い出の場所やお気に入りの場所
出逢ったところに良く行くお買い物のお店
いっぱい回っておうちに帰ってくると
二匹はもうへとへと
白い兎は聞きました
「どうしたの?突然」
黒い兎はいいました
「僕の好きなことを全部しちゃおうって」
白い兎は、どう言う事?と尋ねると
「家族ができてからしたくならないように、我慢する為にね、今全部しちゃおうと思って」
白い兎はなるほど、と大笑い
そのうちまたしたくなるのにね、と心の中で笑うのでした
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「カゾクイロ」
ある小さな家に一匹のおばあさん兎が住んでいました
おばあさん兎は4匹の子兎と一緒に住んでいました
みんなお母さんもお父さんもいません
早くに両親を亡くしたり、家を飛び出したり
一匹で暮らしていたけれど、さみしくなったり
なぜか理由が分からないままの兎も
皆まだ小さいのに、理由があっておばあちゃん兎の家に住んでいます
「おばあちゃん、おばあちゃん。」
なきべそをかいてやってきたのは白兎のチャムです
おばあさん兎は聞きました
「どうしたい、チャム?そんなに目を真っ赤にして」
チャムはその涙をごしごし拭いながら答えます
「今日とっても大事に皆で育ててきた花が枯れちゃったんだ。
僕とってもその花が大好きで、その花もう見られないって思ったら悲しくて」
手には枯れた花が植えられた鉢が一つ
おばあちゃんは頭を撫でると
「うんうん、なんていい子なんだ、お前は。
わたしはあんたが教えてくれなかったらきっと、花は咲いたら枯れるもの。
ものには全て終わりがある、それが当然。
そう思っていただろうて。お前の優しい気持ちがわたしに命の大事さを教えてくれた」
おばあちゃんはそう言うと花の根をもう一度土の中に植えるように言い
チャムはその通りに庭に植えてあげました
「おい、おばあ、おーい、どこにいんだよ」
いらいらしながらやってきたのは黒兎のガル
おばあさんは聞きました
「どうしたい、ガル?そんなに目くじらたてて」
ガルは握った拳をぐっと握り締めて答えます
「俺が乱暴だから、おばあの家からでてけって言われたんだ。
一緒に住んでるあいつらに言われるならまだしも、違う家の奴にだぜ?
むかついたからケンカしてたら、そいつらの親がでてきてさ
お前はあの家の子供でもないくせに、って。」
震える肩を軽く抱くと
「うんうん、なんていい子なんだ、お前は。
わたしはあんたが教えてくれなかったらきっと、親は血が繋がってるもの。
家族にはかならず証拠が必要、それが当然。そう思っていただろうて。
お前の強い気持ちがわたしに家族の形を教えてくれた。」
おばあちゃんはそう言うと、外にこれを吊るしておいで、とドングリを五つ渡しました
ガルはその通りに玄関に飾り付けました
「はぁ。おばあちゃん。おばあちゃん」
消えそうな小さな声はブチ兎のオロ
おばあちゃんは聞きました
「どうしたい、オロ?そんな下ばっか向いて」
オロはその場にしゃがりこんで答えます
「もうよく分からないの。周りの兎は色々できるのにさ。
わたしは何をやってもうまく行かない。もうやだよ。」
おばあちゃんはオロを立ち上がらせて抱きしめると
「うんうん、なんていい子なんだ、お前は。
わたしはお前がそれを教えてくれなかったらきっと、自分が出来るのを当たり前。
誰かと比べることなんて必要ない、出来るんだから当然。そう思っていただろうて。
お前のまっすぐな気持ちがわたしに自分を知ることを教えてくれた」
おばあちゃんはそう言うと、これを皆に渡しておくれと、羽根の髪飾りを手渡しました
オロはその通りにガルとチャムに羽根を渡しました
「ふふふーふふ。るんるん」
鼻歌混じりでのん気なのは一番小さな兎のアム
おばあちゃんは聞きました
「どうしたい、アム?そんなニコニコしちゃって」
アムは軽く首をかしげて答えます
「んー?僕はいつも一緒だよ?
今日もお空が綺麗だったなーって」
そのままアムは鼻歌を歌いながら部屋に戻っていきました
おばあちゃんは首をかしげながら
「あの子はいっつも幸せそう。
どんな小さなことにも幸せを感じれて
教えることなんかより教えてもらうことのが多いみたい。
あの子の不思議な気持ちでわたしは今更だけど育ててもらってる気分だわ。」
おばあちゃんはそう言うと、オロに髪飾りを渡してあげてと言い
オロは言うとおり、アムに髪飾りを手渡しました
その晩、テーブルを囲んで四匹と食事
チャムはちっちゃく食べ物を切って小さなお口へ
ガルは一口でぺロッと食べておかわりを
オロは周りを見ながら食べるものを選んで
アムはのんびりマイペースにもぐもぐ
んな四匹に囲まれた食事がおばあちゃんにはとっても幸せでした
そして夜も老けた頃
アムが皆を呼び出しました
おばあちゃんを含め四匹が集まると
「皆集まったね、よーし」
そう言ったとたんアムの体がピカピカと光りだしました
四匹は大慌て
おばあちゃんも目を丸くしていると
アムの背中に大きな羽根が生えたのです
アムは言いました
「チャムもガルもオロも皆、とってもいい子。
でも誰にも教えてもらうことができなくて、いいところだって。
おばあちゃんも昔同じように、たくさん苦労してたよね。
僕が来る頃はまだ自分のことで精一杯で。
でも、今は違う。
おばあちゃんも教えてあげて、そんで教えてもらって。
僕の役目ももうおしまい。
最後に皆にプレゼント。いーくーよー」
アムがえい、っと羽根を震わすと
外の庭にチャムの好きだった花が満開
外のどんぐりは金の鐘になって、チリチリリン
羽根飾りが皆の左耳でキラキラ光ると
そこだけブチに羽根の模様に毛色が変わりました
「これで皆家族だよー」
アムはにっこり微笑むと玄関を開けました
おばあちゃんは近寄って、ありがとうと手を振りました
次の日になり
アムのいないテーブルでガルは言いました
「アムの奴、もう帰ってこないのかな?」
おばあちゃんはにっこり笑って一言
「んーん、帰ってくるわよ、家族だもの。
だって、あの子の左耳。飛び立つ時、私たちと同じ、羽根の模様になってたもの。」
ぱたん
二匹は本を閉じるとお互いの顔を見合いました
「家族かー。君はどんな家族がいい?」
白い兎は言いました
「わたしは、なんでも好きな事をさせてあげたいなー。」
黒い兎は思いました
今まで二匹の間でやっちゃいけないこと、あまり無かったけれど
子供や家族が出来たらきっとそうもいかなくなるんだろうな、って
独り占めできる期間が終わったらきっと変ってしまうのかな、って
白い兎の手をつかむと、黒い兎は言いました
「ねぇ。ちょっとお散歩しよ」
玄関を出て色んなところへ二匹はお散歩しました
思い出の場所やお気に入りの場所
出逢ったところに良く行くお買い物のお店
いっぱい回っておうちに帰ってくると
二匹はもうへとへと
白い兎は聞きました
「どうしたの?突然」
黒い兎はいいました
「僕の好きなことを全部しちゃおうって」
白い兎は、どう言う事?と尋ねると
「家族ができてからしたくならないように、我慢する為にね、今全部しちゃおうと思って」
白い兎はなるほど、と大笑い
そのうちまたしたくなるのにね、と心の中で笑うのでした
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
2012
白い兎と黒い兎。
二匹はいつも一緒。
今日も二匹のお家に一冊の絵本が届きました。
絵本の名前は「ハピネスノー」
一匹のライオンのお話。
ライオンは、貧しくも優しい両親に育てられ、すくすく成長して行きました。
やがてたてがみも立派、大きくなったライオンはやんちゃで両親の寝ている間に家を飛び出して、近くの山に。
しかし、何時の間にか帰り道がわからなくなってしまったのです。
薄れゆく意識の中、降り積もりゆく雪にお願いをするとライオンの気持ちが雲に抱かれて両親のお家の上に。
綿毛のようにふわふわの雪がお家の周りに降り積もり、それはやがて春には息子のたてがみに似た黄色い花が咲きました。
それからというもの両親にたくさんの幸せが訪れ、まるで二匹の幸せを守るように毎年その雪と花が咲く事から、「ダンデライオン」と呼ばれるその花を降らすその雪を「ハピネスノー」と呼ぶようになりました。
白い兎は言いました。「思いはこうやって強く願うと形になるのかな?」
黒い兎は言いました。「お話の中だけど本当にこうなったら素敵かもね」
夢見る事が大好きな白い兎。
その日から色々考えては思いを願いに、願いを形に、そうお祈りして眠りにつくように。
朝起きると降る雪を見て、「もっとお願いしなくちゃ!」と。
その日の夜もお願い。
その次の夜もお願いを。
いつか花が咲きますようにって。
だけどいつまでたっても花は咲きません。
黒い兎はそれを見て、ある事を思いつきました。
その日の夜もお願いをした白い兎はスヤスヤ眠り、夢の中。
黒い兎はそーっとベッドから降りると
床一面に画用紙を敷きました。
そして、思いを込めて白いふわふわの花を沢山描きました。
描き終わる頃には朝に近づいていました。
黒い兎は最後の一つを描き終わると布団に戻りそのまま眠りに。
目を覚ました白い兎はびっくり、ベッドの周りは白い花。
驚いた白い兎は黒い兎を起こそうとしました。
くるっと振り向いた黒い兎を見て白い兎は思わず笑顔。
黒い兎のほっぺたに、落とし忘れた白い絵の具。
あまりに上手で気づかなかったのですが、白い花は全部黒い兎の描いたものでした。
端っこの方にはこう書いてありました。
「枯れない思いが届きました。相手にちゃんと届いたかな?ハピネスノーより」
白い兎と黒い兎。
二匹はいつも仲良しで、黒い兎はいつだって白い兎が大好き。
でもね、黒い兎が起きると白い花の花びらの半分は黒く塗られててね。
こう返事が書いてあったんだって。
「思いは届いたよ。良かったおんなじ思いだったみたい。白い兎。」
よく見たら白い兎のほっぺたに黒い絵の具がついてたって。
その日は二匹してほっぺたに白黒絵の具を付けておやすみ。
モノクロの花に囲まれて幸せそうな二匹です。
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
二匹はいつも一緒。
今日も二匹のお家に一冊の絵本が届きました。
絵本の名前は「ハピネスノー」
一匹のライオンのお話。
ライオンは、貧しくも優しい両親に育てられ、すくすく成長して行きました。
やがてたてがみも立派、大きくなったライオンはやんちゃで両親の寝ている間に家を飛び出して、近くの山に。
しかし、何時の間にか帰り道がわからなくなってしまったのです。
薄れゆく意識の中、降り積もりゆく雪にお願いをするとライオンの気持ちが雲に抱かれて両親のお家の上に。
綿毛のようにふわふわの雪がお家の周りに降り積もり、それはやがて春には息子のたてがみに似た黄色い花が咲きました。
それからというもの両親にたくさんの幸せが訪れ、まるで二匹の幸せを守るように毎年その雪と花が咲く事から、「ダンデライオン」と呼ばれるその花を降らすその雪を「ハピネスノー」と呼ぶようになりました。
白い兎は言いました。「思いはこうやって強く願うと形になるのかな?」
黒い兎は言いました。「お話の中だけど本当にこうなったら素敵かもね」
夢見る事が大好きな白い兎。
その日から色々考えては思いを願いに、願いを形に、そうお祈りして眠りにつくように。
朝起きると降る雪を見て、「もっとお願いしなくちゃ!」と。
その日の夜もお願い。
その次の夜もお願いを。
いつか花が咲きますようにって。
だけどいつまでたっても花は咲きません。
黒い兎はそれを見て、ある事を思いつきました。
その日の夜もお願いをした白い兎はスヤスヤ眠り、夢の中。
黒い兎はそーっとベッドから降りると
床一面に画用紙を敷きました。
そして、思いを込めて白いふわふわの花を沢山描きました。
描き終わる頃には朝に近づいていました。
黒い兎は最後の一つを描き終わると布団に戻りそのまま眠りに。
目を覚ました白い兎はびっくり、ベッドの周りは白い花。
驚いた白い兎は黒い兎を起こそうとしました。
くるっと振り向いた黒い兎を見て白い兎は思わず笑顔。
黒い兎のほっぺたに、落とし忘れた白い絵の具。
あまりに上手で気づかなかったのですが、白い花は全部黒い兎の描いたものでした。
端っこの方にはこう書いてありました。
「枯れない思いが届きました。相手にちゃんと届いたかな?ハピネスノーより」
白い兎と黒い兎。
二匹はいつも仲良しで、黒い兎はいつだって白い兎が大好き。
でもね、黒い兎が起きると白い花の花びらの半分は黒く塗られててね。
こう返事が書いてあったんだって。
「思いは届いたよ。良かったおんなじ思いだったみたい。白い兎。」
よく見たら白い兎のほっぺたに黒い絵の具がついてたって。
その日は二匹してほっぺたに白黒絵の具を付けておやすみ。
モノクロの花に囲まれて幸せそうな二匹です。
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「ボロノハナ」
お話は一匹の凄く汚い兎
周りの皆は下げずむ目
彼の事を「ボロ」と呼びました
ボロは皆の嫌われ者
おうちもなくて
お父さんもお母さんもいなくて
だからいつも一人きり
誰かに会えば
蹴飛ばされたり
叩かれたり
ゴミをぶつけられたり
今日もボロは怪我だらけ
あざだらけの体と
痛くて引き摺る脚
小さな肩を震わせて
暗い森の中へ帰ります
ジメジメとした森の中
シクシク聞こえるボロの声
涙は止まらない
泣く必要
ほんとはないのにな
あまりに不憫な自分に
ボロはなんだかおかしくなって
思わず歌い出しました
「ボロはどんな子知ってるの?
いい子?わるい子?汚い子?
僕は僕を知ってるよ
あなたが僕を知らないなら
僕は知らせてあげたかった
笑って、笑って、笑って欲しいよ
ぎこちなく僕は生きる
ちくはぐな答えでもいい
正しい、正しい言葉は
ここにあるのに
まだ言えないよ」
やっとの思いで着いた
ボロの眠る穴ぐら
とっても小さなその中には
皆が捨てたものだらけ
落書きされたポスター
終わりのページのない絵本
髪の毛のない人形
どれもボロが拾って来た
ボロの大事な宝物
「ただいま皆、えへへ。
またいじめられちゃったよ」
無理やりに笑顔をつくりました
涙もまだ止まってないのに
割れてヒビだらけのランプ
マッチを擦って火をつける
散り散りな光が部屋に広がって
ようやく、ボロは一安心
ランプの光を眺めていたら
なんだか眠くなって来ました
「あーあ、なんだか疲れちゃった。
これ、後で皆でたべよ。だから少し休ませてね」
その手に握られてたのは
一袋のビスケット
その袋を大事に抱きしめて
ボロは目を閉じました
「ボロ?ボロってば!」
誰かが自分を呼んでいる
目を覚ましてみると
ボロが拾った人形がいました
「もー、いつまで寝てんのさ。死んじゃったかと思ったよ」
間違いなく喋ってるのは人形です
ボロはわけがわからず呆然
「どうしたの?そんな顔して。
あっはは。おかしいの、変な顔」
人形は続けて言いました
ボロは慌てて周りを見渡すと
そこは穴ぐらではなくて
ふかふかのベッドの上
どこか記憶にあるけど
部屋もお城の中みたい
怖い思いを隠しながらボロは聞きました
「ここは…ここはどこ?」
すると、人形が答えます
「ここは絵本の中だよ
ボロが読んでた絵本のね」
なるほど、確かにそうだ
読んでた絵本の王子様は
確かにこの部屋にいたんだった
人形がボロの手を取り言いました
「ほら!急いでボロ!
次のページが始まっちゃう」
そう言われて引っ張られるように
ボロはお話の世界を進んで行きます
馬に乗ったり
ダンスを踊ったり
あったかいご飯を食べたり
星空の元散歩したり
魔法使いに会って
お姫様を見つけたり
お話が終わりに近づいて
ボロは気づきました
おしまいが破けてるんだ、って
すると、人形が
ニコッと笑って言いました
「大丈夫だよ、僕達に任せてよ」
そうして、夜が明けると
そこに広がるのは綺麗な景色
覗くと街並みが見えます
空には色鮮やかな虹がかかっています
ボロはその虹を見て
これはポスターの中なんだ
そう思いました
落書きを隠そうと
葉っぱや花を集めては
落書きの上から貼り付けて
ポスターにボロは虹をかけたのです
不格好だけど鮮やかな虹
花と草が作る虹
ボロの描いた宝物の景色
なんて素敵なエンディングでしょう
人形が近寄って来て言いました
「僕の為に布で帽子を作ってくれた。
絵本の汚れを丁寧に直してくれた。
ポスターの落書きを素敵にしてくれた。
宝物って言ってくれた。
傷つけられたら痛いよね。
ダメになったからって、
捨てられたら辛いよね。
でも、僕達は捨てられる前より
今の方がずっと好きだよ。」
ボロの手にはビスケットの袋がありました。
「食べよっか、ビスケット。
今日はね、君の誕生日なんだよ?
あの日落ちてた人形の君を拾って
穴ぐらに持ち帰って一年。
だからちょっと頑張ったんだ
でも、あーあ。」
袋の中には
粉々になったビスケット
いじめの中で
ボロが守ったビスケット
一つ取り出すと
ボロは人形に差し出しました
欠片ほどの小さな小さなビスケット
でも、思いのこもったプレゼント
人形は涙こそ流せないけど
肩を震わせて言いました。
「ボロ。ありがとう。
汚くて、アザだらけで、傷だらけ。
ボロは自分に理由を探してたけど
むしろ、最初からなかったんだ。
もう、やめよ。
もう、それでいいんだよ。」
人形に抱きつかれて
ボロは沢山泣きました。
正しい言葉はここにあった。
ずっと捨てられたらと思っていた理由
本当は初めからなかった。
そんな、分かっていた何かを
知りたくて、知らせたかった。
ボロはそのままビスケットを抱いて
人形に抱かれて眠りました。
朝になるとそこには焼けた兎の骨。
焼けて焦げた人形と
倒れて欠けたランプの破片。
それからそこには花が咲くのです
汚くてボロボロ
でもそれでいいと咲く
ビスケットみたいな中心の
ボロの花
ぱたん。
白い兎がその絵本を閉じて
黒い兎に渡しました
黒い兎が本棚に入れようと
手を伸ばしたその時
本が手元からするり
思わず本をつかもうとして
本と一緒に転んでしまいました
「あいててて」
腰をぽんぽん黒い兎が本を見ると
無理につかんだせいで
ページをいくつか破いてしまいました
急いでそのページを直そうと
黒い兎は部屋に戻って
白い兎と破けたページを探しました
1ページくっつけては乾かして
また1ページくっつけては乾かして
段々と元通りになって行く絵本
そうして、最後の1ページ
ボロが歌うページでした
泣きながら必死の笑顔で
歌うボロの絵の入ったページ
白い兎は言いました。
「ねえ、このページ…」
黒い兎は頷くと
「うん、僕もそう思う」
二匹は本を閉じて
そのページを破りました
何回も
何回も
ボロの事は知れたから
皆は知れなかったけど
僕達は知れたから
もうボロが歌う事がないように
歌った事などない事にしようと
びりびりに破けて
紙くずになったボロの歌
ひらひら、ひらひら
二匹の上で舞い散りました
森の緑とボロの血の赤
それはまるで絵本で見た
ボロのポスターの虹みたいに
とても綺麗なものでした
ありがとうって伝えるみたいに
二匹はその後その破片を拾って
暖炉の中で燃やしました
白い兎は言いました
「笑っていいんだよ、ボロ
あなたが捨てられないものは
初めからなかった、それでいいの」
黒い兎は言いました。
「ただしいものなんて見つからない
だから、してあげられない
間違えでもいい
ちぐはぐで構わないなら
これがきっと答えだよ」
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
p.s
その日、白い兎は
子供の頃大事にしてた人形を
引っ張り出してきてね
それこそボロボロなその人形を
ぎゅっと抱きしめて眠りました
それを見て黒い兎は
いつも繋いでる手が
人形にとられたと
ちょっとだけ
ちょっとだけ
人形にやきもちを焼きました
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「ボロノハナ」
お話は一匹の凄く汚い兎
周りの皆は下げずむ目
彼の事を「ボロ」と呼びました
ボロは皆の嫌われ者
おうちもなくて
お父さんもお母さんもいなくて
だからいつも一人きり
誰かに会えば
蹴飛ばされたり
叩かれたり
ゴミをぶつけられたり
今日もボロは怪我だらけ
あざだらけの体と
痛くて引き摺る脚
小さな肩を震わせて
暗い森の中へ帰ります
ジメジメとした森の中
シクシク聞こえるボロの声
涙は止まらない
泣く必要
ほんとはないのにな
あまりに不憫な自分に
ボロはなんだかおかしくなって
思わず歌い出しました
「ボロはどんな子知ってるの?
いい子?わるい子?汚い子?
僕は僕を知ってるよ
あなたが僕を知らないなら
僕は知らせてあげたかった
笑って、笑って、笑って欲しいよ
ぎこちなく僕は生きる
ちくはぐな答えでもいい
正しい、正しい言葉は
ここにあるのに
まだ言えないよ」
やっとの思いで着いた
ボロの眠る穴ぐら
とっても小さなその中には
皆が捨てたものだらけ
落書きされたポスター
終わりのページのない絵本
髪の毛のない人形
どれもボロが拾って来た
ボロの大事な宝物
「ただいま皆、えへへ。
またいじめられちゃったよ」
無理やりに笑顔をつくりました
涙もまだ止まってないのに
割れてヒビだらけのランプ
マッチを擦って火をつける
散り散りな光が部屋に広がって
ようやく、ボロは一安心
ランプの光を眺めていたら
なんだか眠くなって来ました
「あーあ、なんだか疲れちゃった。
これ、後で皆でたべよ。だから少し休ませてね」
その手に握られてたのは
一袋のビスケット
その袋を大事に抱きしめて
ボロは目を閉じました
「ボロ?ボロってば!」
誰かが自分を呼んでいる
目を覚ましてみると
ボロが拾った人形がいました
「もー、いつまで寝てんのさ。死んじゃったかと思ったよ」
間違いなく喋ってるのは人形です
ボロはわけがわからず呆然
「どうしたの?そんな顔して。
あっはは。おかしいの、変な顔」
人形は続けて言いました
ボロは慌てて周りを見渡すと
そこは穴ぐらではなくて
ふかふかのベッドの上
どこか記憶にあるけど
部屋もお城の中みたい
怖い思いを隠しながらボロは聞きました
「ここは…ここはどこ?」
すると、人形が答えます
「ここは絵本の中だよ
ボロが読んでた絵本のね」
なるほど、確かにそうだ
読んでた絵本の王子様は
確かにこの部屋にいたんだった
人形がボロの手を取り言いました
「ほら!急いでボロ!
次のページが始まっちゃう」
そう言われて引っ張られるように
ボロはお話の世界を進んで行きます
馬に乗ったり
ダンスを踊ったり
あったかいご飯を食べたり
星空の元散歩したり
魔法使いに会って
お姫様を見つけたり
お話が終わりに近づいて
ボロは気づきました
おしまいが破けてるんだ、って
すると、人形が
ニコッと笑って言いました
「大丈夫だよ、僕達に任せてよ」
そうして、夜が明けると
そこに広がるのは綺麗な景色
覗くと街並みが見えます
空には色鮮やかな虹がかかっています
ボロはその虹を見て
これはポスターの中なんだ
そう思いました
落書きを隠そうと
葉っぱや花を集めては
落書きの上から貼り付けて
ポスターにボロは虹をかけたのです
不格好だけど鮮やかな虹
花と草が作る虹
ボロの描いた宝物の景色
なんて素敵なエンディングでしょう
人形が近寄って来て言いました
「僕の為に布で帽子を作ってくれた。
絵本の汚れを丁寧に直してくれた。
ポスターの落書きを素敵にしてくれた。
宝物って言ってくれた。
傷つけられたら痛いよね。
ダメになったからって、
捨てられたら辛いよね。
でも、僕達は捨てられる前より
今の方がずっと好きだよ。」
ボロの手にはビスケットの袋がありました。
「食べよっか、ビスケット。
今日はね、君の誕生日なんだよ?
あの日落ちてた人形の君を拾って
穴ぐらに持ち帰って一年。
だからちょっと頑張ったんだ
でも、あーあ。」
袋の中には
粉々になったビスケット
いじめの中で
ボロが守ったビスケット
一つ取り出すと
ボロは人形に差し出しました
欠片ほどの小さな小さなビスケット
でも、思いのこもったプレゼント
人形は涙こそ流せないけど
肩を震わせて言いました。
「ボロ。ありがとう。
汚くて、アザだらけで、傷だらけ。
ボロは自分に理由を探してたけど
むしろ、最初からなかったんだ。
もう、やめよ。
もう、それでいいんだよ。」
人形に抱きつかれて
ボロは沢山泣きました。
正しい言葉はここにあった。
ずっと捨てられたらと思っていた理由
本当は初めからなかった。
そんな、分かっていた何かを
知りたくて、知らせたかった。
ボロはそのままビスケットを抱いて
人形に抱かれて眠りました。
朝になるとそこには焼けた兎の骨。
焼けて焦げた人形と
倒れて欠けたランプの破片。
それからそこには花が咲くのです
汚くてボロボロ
でもそれでいいと咲く
ビスケットみたいな中心の
ボロの花
ぱたん。
白い兎がその絵本を閉じて
黒い兎に渡しました
黒い兎が本棚に入れようと
手を伸ばしたその時
本が手元からするり
思わず本をつかもうとして
本と一緒に転んでしまいました
「あいててて」
腰をぽんぽん黒い兎が本を見ると
無理につかんだせいで
ページをいくつか破いてしまいました
急いでそのページを直そうと
黒い兎は部屋に戻って
白い兎と破けたページを探しました
1ページくっつけては乾かして
また1ページくっつけては乾かして
段々と元通りになって行く絵本
そうして、最後の1ページ
ボロが歌うページでした
泣きながら必死の笑顔で
歌うボロの絵の入ったページ
白い兎は言いました。
「ねえ、このページ…」
黒い兎は頷くと
「うん、僕もそう思う」
二匹は本を閉じて
そのページを破りました
何回も
何回も
ボロの事は知れたから
皆は知れなかったけど
僕達は知れたから
もうボロが歌う事がないように
歌った事などない事にしようと
びりびりに破けて
紙くずになったボロの歌
ひらひら、ひらひら
二匹の上で舞い散りました
森の緑とボロの血の赤
それはまるで絵本で見た
ボロのポスターの虹みたいに
とても綺麗なものでした
ありがとうって伝えるみたいに
二匹はその後その破片を拾って
暖炉の中で燃やしました
白い兎は言いました
「笑っていいんだよ、ボロ
あなたが捨てられないものは
初めからなかった、それでいいの」
黒い兎は言いました。
「ただしいものなんて見つからない
だから、してあげられない
間違えでもいい
ちぐはぐで構わないなら
これがきっと答えだよ」
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
p.s
その日、白い兎は
子供の頃大事にしてた人形を
引っ張り出してきてね
それこそボロボロなその人形を
ぎゅっと抱きしめて眠りました
それを見て黒い兎は
いつも繋いでる手が
人形にとられたと
ちょっとだけ
ちょっとだけ
人形にやきもちを焼きました
2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
今日も二匹のもとに一冊の絵本
題名は「ママノナゾナゾ」
ある所に住む二匹の兎の親子のお話です
お母さん兎は村でも有名なナゾナゾ好きで
誰かに会うと、その度にナゾナゾを出しました
時には皆が頭を悩ませるようなナゾナゾを出すのですが
そんな時はお母さん兎の子供に聞くと答えが分かるようになっていました
なぜなら、子供兎は一冊の本を持っていて
そこにはお母さん兎の出すナゾナゾの答えが載っているからです
今日もナゾナゾの答えを聞きに一匹の兎が子供兎を尋ねに来ました
「強い風が吹いても、熱い火をつけられても、怒ったりしないで側にいるのはなーに?」
兎が手を合わせてお願いしながら子供兎に聞くと
子供兎は本を手にしてページをいくつかめくりました
「答えは。影。だよ。これ星ひとつの問題だよ?」
本を閉じると子供兎は苦笑いしました
お母さんのナゾナゾには難しさがあって星の数で難しさが分かれてます
一番簡単なものが星一つ
一番難しいものが星五つ
この本の中にはその答えが全部載ってるのです
なるほど、とポンと手を打つと
答えを知った兎は御礼に飴玉を一つ
子供兎に渡すと帰っていきました
まもなくお母さん兎が戻ってくると、飴玉を見せて
「これ、ナゾナゾ教えたらくれたの」
と子供兎はお母さん兎に自慢げに飴玉を見せました
「あら?そんな難しいナゾナゾしたかしら?」
ふふふ、と笑うとお母さん兎は子供兎の頭をなでて
どんなナゾナゾだったか聞きました
日に尋ねてくる兎たちのなぞなぞを教えて
その聞かれた数が増えるしくみだからです
お母さん兎と星を増やしたり減らしたりするが楽しみでした
今日聞かれた答えのナゾナゾを教えると
星のシールを一つお母さん兎は貼ってあげました
子供兎は前から聞きたかったことがありました
「前から聞きたかったんだけど、星五つのナゾナゾってないよね?どうして?」
いつもページをめくっても星五つのナゾナゾを見たことのない子供兎は
いつもそれを不思議に思っていたのでした
お母さん兎は、ふふふ、と笑うと
子供兎に小さな声で言いました
「あるよ、星五つのナゾナゾ、内緒だよ?知りたい?」
子供兎はもちろん!と喜んで
本を開いてどのナゾナゾだろうと探し出しました
するとお母さん兎は本を閉じてしまいました
びっくりした子供兎がぼーっとしえいると
「ふふふ、そこにないのよ。だから一度しか言わないから良く覚えてね。」
お母さん兎は、そういえばあなたにナゾナゾを出すのは初めてね、と言いながら
子供兎の目をじっと見て、こういいました
「お母さんは一つ、あなたは五つ。だけどいつかあなたが一つ。それはなーに?」
子供兎は忘れないように本の後ろにいわれたナゾナゾを書き
初めての五つ星のナゾナゾに胸を高鳴らせて、子供兎は部屋に戻っていきました
それから何日もナゾナゾの答えを考えましたが
答えはまだ分からないまま
お母さん兎にヒントを聞いても教えてくれず
さすがの子供兎もとうとう諦めてしまいました
お母さん兎の洋服の裾をつかむと
「お母さん、降参だよ。もう全然分からないもの。」
と首をかしげて、お母さん兎を覗き込みました
それを見たお母さん兎はいつものように
ふふふ、と笑うと
「あらあら、だらしがない。でもいいわ。特別にヒントをあげようか」
しゃがみこむと、子供兎の目をじっと見て言いました
「このナゾナゾは私がお母さんから教えてもらったナゾナゾでね。あなたが生まれた時に答えが分かったの。だからあなたもいつかお母さんになって答えが分かったら自分の子供にナゾナゾしてあげてね。約束できる?」
お母さん兎はそう言うと小指を子供兎の前に出しました
まだ小さな子供兎はその小指をぎゅっと握り
「しっかり約束したよ」
しっかり握られたその小指を眺めてお母さん兎は言いました
「さすが私の子供だね。きっとあなたなら答えがでるわ。」
ヒントは?と聞くと、お母さん兎は
大丈夫、いつかちゃんと分かるからと
ふふふ、とまた笑うとご飯の準備を始めました
それから何年もの時間が過ぎて
子供兎も大きくなり、大好きな相手を見つけて
恋をして、愛を伝え合い、一緒に生活を始め
おなかに小さな命を宿しました
みるみるうちに子供兎のお腹は大きくなり
子供兎はそのお腹の新しい命に
お母さん兎からもらったナゾナゾの本を呼んで聞かせました
そしてある朝
「おぎゃー」
と言う産声と共に、子供兎は元気な赤ちゃんを産みました
まだ言葉も知らぬあかちゃん兎を側に
にこっと微笑みかけて抱き上げようとした時
ぎゅっ
その指を小さな小さな、五本の指が子供兎の指を握り締めました
そのとき子供兎は気付いたのです
「答えはこれだったのね。すっごく暖かい答え」
子供兎の小指一本に赤ちゃん兎の五本の指
昔は私の指が五本でお母さんの指が一本
「いつかこの子が大きくなったら私もナゾナゾしてあげなくちゃね」
そして子供兎もまた大きくなった赤ちゃん兎に本を渡して
大人になる前にナゾナゾをするのです
「お母さんは一つ、あなたは五つ。だけどいつかあなたが一つ。それはなーに?」
ぱたん。
絵本の裏側には手形が一つあって
それはとっても小さな手形でした
白い兎がおもむろに、その手形に手のひらをあわせると
すっぽりと覆い隠すほどの大きさでした
「私も大きくなってるってことなんだろうね」
黒い兎は本を受け取ると、しまいに行きながら
「僕が1つ、君に2つで10。君が1つ、僕に2つで10。なーんだ?」
白い兎は言われた数字を並べて眺めてみました
しかし、答えが分からずにいると
「答え、わかった?ってまだ考えてたの?」
と、あくびをしながら黒い兎が近づいてきました
気付くと大分時間が経っていたようで、もう夜空の月もすやすや、ねむねむ
白い兎は数字とにらめっこしながら
「待って、もうちょっと時間くれたら答え見つけるから」
と答え探しに焦りだしました
ふふふ。と笑うと黒い兎は白い兎の目をじっと見て両手を広げ
ぎゅっ
黒い兎は白い兎を抱きしめると、ふわふわの体を包み込みました
「君も同じようにしてみて」
白い兎はその両手をくるりとまわして
ぎゅーっ
黒い兎は白い兎に微笑んで
「これが答えでした」
1つにくっ付いてしまうくらい
2本の両手でぎゅっとして
10本の指でお互いのふわふわの毛並みを包み込むと
暖かくて幸せななぞなぞが解けました
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
二匹はいつも一緒
今日も二匹のもとに一冊の絵本
題名は「ママノナゾナゾ」
ある所に住む二匹の兎の親子のお話です
お母さん兎は村でも有名なナゾナゾ好きで
誰かに会うと、その度にナゾナゾを出しました
時には皆が頭を悩ませるようなナゾナゾを出すのですが
そんな時はお母さん兎の子供に聞くと答えが分かるようになっていました
なぜなら、子供兎は一冊の本を持っていて
そこにはお母さん兎の出すナゾナゾの答えが載っているからです
今日もナゾナゾの答えを聞きに一匹の兎が子供兎を尋ねに来ました
「強い風が吹いても、熱い火をつけられても、怒ったりしないで側にいるのはなーに?」
兎が手を合わせてお願いしながら子供兎に聞くと
子供兎は本を手にしてページをいくつかめくりました
「答えは。影。だよ。これ星ひとつの問題だよ?」
本を閉じると子供兎は苦笑いしました
お母さんのナゾナゾには難しさがあって星の数で難しさが分かれてます
一番簡単なものが星一つ
一番難しいものが星五つ
この本の中にはその答えが全部載ってるのです
なるほど、とポンと手を打つと
答えを知った兎は御礼に飴玉を一つ
子供兎に渡すと帰っていきました
まもなくお母さん兎が戻ってくると、飴玉を見せて
「これ、ナゾナゾ教えたらくれたの」
と子供兎はお母さん兎に自慢げに飴玉を見せました
「あら?そんな難しいナゾナゾしたかしら?」
ふふふ、と笑うとお母さん兎は子供兎の頭をなでて
どんなナゾナゾだったか聞きました
日に尋ねてくる兎たちのなぞなぞを教えて
その聞かれた数が増えるしくみだからです
お母さん兎と星を増やしたり減らしたりするが楽しみでした
今日聞かれた答えのナゾナゾを教えると
星のシールを一つお母さん兎は貼ってあげました
子供兎は前から聞きたかったことがありました
「前から聞きたかったんだけど、星五つのナゾナゾってないよね?どうして?」
いつもページをめくっても星五つのナゾナゾを見たことのない子供兎は
いつもそれを不思議に思っていたのでした
お母さん兎は、ふふふ、と笑うと
子供兎に小さな声で言いました
「あるよ、星五つのナゾナゾ、内緒だよ?知りたい?」
子供兎はもちろん!と喜んで
本を開いてどのナゾナゾだろうと探し出しました
するとお母さん兎は本を閉じてしまいました
びっくりした子供兎がぼーっとしえいると
「ふふふ、そこにないのよ。だから一度しか言わないから良く覚えてね。」
お母さん兎は、そういえばあなたにナゾナゾを出すのは初めてね、と言いながら
子供兎の目をじっと見て、こういいました
「お母さんは一つ、あなたは五つ。だけどいつかあなたが一つ。それはなーに?」
子供兎は忘れないように本の後ろにいわれたナゾナゾを書き
初めての五つ星のナゾナゾに胸を高鳴らせて、子供兎は部屋に戻っていきました
それから何日もナゾナゾの答えを考えましたが
答えはまだ分からないまま
お母さん兎にヒントを聞いても教えてくれず
さすがの子供兎もとうとう諦めてしまいました
お母さん兎の洋服の裾をつかむと
「お母さん、降参だよ。もう全然分からないもの。」
と首をかしげて、お母さん兎を覗き込みました
それを見たお母さん兎はいつものように
ふふふ、と笑うと
「あらあら、だらしがない。でもいいわ。特別にヒントをあげようか」
しゃがみこむと、子供兎の目をじっと見て言いました
「このナゾナゾは私がお母さんから教えてもらったナゾナゾでね。あなたが生まれた時に答えが分かったの。だからあなたもいつかお母さんになって答えが分かったら自分の子供にナゾナゾしてあげてね。約束できる?」
お母さん兎はそう言うと小指を子供兎の前に出しました
まだ小さな子供兎はその小指をぎゅっと握り
「しっかり約束したよ」
しっかり握られたその小指を眺めてお母さん兎は言いました
「さすが私の子供だね。きっとあなたなら答えがでるわ。」
ヒントは?と聞くと、お母さん兎は
大丈夫、いつかちゃんと分かるからと
ふふふ、とまた笑うとご飯の準備を始めました
それから何年もの時間が過ぎて
子供兎も大きくなり、大好きな相手を見つけて
恋をして、愛を伝え合い、一緒に生活を始め
おなかに小さな命を宿しました
みるみるうちに子供兎のお腹は大きくなり
子供兎はそのお腹の新しい命に
お母さん兎からもらったナゾナゾの本を呼んで聞かせました
そしてある朝
「おぎゃー」
と言う産声と共に、子供兎は元気な赤ちゃんを産みました
まだ言葉も知らぬあかちゃん兎を側に
にこっと微笑みかけて抱き上げようとした時
ぎゅっ
その指を小さな小さな、五本の指が子供兎の指を握り締めました
そのとき子供兎は気付いたのです
「答えはこれだったのね。すっごく暖かい答え」
子供兎の小指一本に赤ちゃん兎の五本の指
昔は私の指が五本でお母さんの指が一本
「いつかこの子が大きくなったら私もナゾナゾしてあげなくちゃね」
そして子供兎もまた大きくなった赤ちゃん兎に本を渡して
大人になる前にナゾナゾをするのです
「お母さんは一つ、あなたは五つ。だけどいつかあなたが一つ。それはなーに?」
ぱたん。
絵本の裏側には手形が一つあって
それはとっても小さな手形でした
白い兎がおもむろに、その手形に手のひらをあわせると
すっぽりと覆い隠すほどの大きさでした
「私も大きくなってるってことなんだろうね」
黒い兎は本を受け取ると、しまいに行きながら
「僕が1つ、君に2つで10。君が1つ、僕に2つで10。なーんだ?」
白い兎は言われた数字を並べて眺めてみました
しかし、答えが分からずにいると
「答え、わかった?ってまだ考えてたの?」
と、あくびをしながら黒い兎が近づいてきました
気付くと大分時間が経っていたようで、もう夜空の月もすやすや、ねむねむ
白い兎は数字とにらめっこしながら
「待って、もうちょっと時間くれたら答え見つけるから」
と答え探しに焦りだしました
ふふふ。と笑うと黒い兎は白い兎の目をじっと見て両手を広げ
ぎゅっ
黒い兎は白い兎を抱きしめると、ふわふわの体を包み込みました
「君も同じようにしてみて」
白い兎はその両手をくるりとまわして
ぎゅーっ
黒い兎は白い兎に微笑んで
「これが答えでした」
1つにくっ付いてしまうくらい
2本の両手でぎゅっとして
10本の指でお互いのふわふわの毛並みを包み込むと
暖かくて幸せななぞなぞが解けました
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒