2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
今日も二匹に一冊の絵本
題名は「ウソノカタマリ」
嘘はついちゃだめだって
知ってるよ、知ってるんだ
それでも、つくしかなかったのは
本当がそこにあったから
一匹の兎は大事な恋人をなくしてしおれた花みたい
それを見た悪魔がしめしめと、兎に近寄り言いました
「お前が百個嘘を付いたら、その塊を俺が貰って、彼女とずっと一緒に居られるようにしてやるよ」
兎はとっても彼女が好きだったから
本当に本当に大好きだったから
毎日毎日嘘を付きました
帰ってくると悪魔がいて、ついた嘘を数えます
右手に持った小さな種が、嘘をつく度大きくなって
20個嘘をつく頃には、小さな枝が生えました
「こいつがやがて花が咲く。そしたらお前は彼女に会える」
兎の脳裏に彼女との日々
ごめんなさいとのかくれんぼ
いつまでたっても見つからないのは
もうごめんなさいがいないから
どんどんどんどん、嘘をついて
どんどんどんどん、大きくなる種
「まだまだもっと嘘をつけ。でないと彼女は帰ってこないぞ?」
悪魔が兎の背中を押します
真っ黒な尻尾はくるくると回り、まるで催眠術のよう
兎の目には彼女のまぼろし
部屋には彼女が帰ってくる日の為に
向かいに置かれた彼女の椅子
兎は冷たい椅子を抱きしめて
わんわんわんわん泣きました
「あぁ、苦しいよ。苦しいよ。それでも君に逢いたいよ」
涙で濡れた長い睫毛
撫でる手はあと嘘幾つ?
眠れない夜が続きました
食べられない日が続きました
それでも悪魔が待っている
そして彼女が待っている
やつれた体を隠す為
兎は黒いマントを買いました
けれどもそれがダメでした
皆がどんどん怖がって、なかなか嘘がつけません
兎は遠くに旅支度
知らない兎を騙すことにしました
それから何年、月日が流れて
太陽も月も星も雲も草も花も兎も
何もかもが大人からおじいさんになりました
兎は刻まれたシワに触れて思いました
幾つ嘘をついただろう?
種はもうじき花が咲くかな?
悪魔はどんな顔してるかな?
僕は何がしたかったんだ?
悪魔がそっと囁きました
「見ろ、もうじき花が咲く、彼女と一緒に居られるぞ」
そうだ、彼女が帰ってくるんだ
彼女に会いたくて嘘ついたんだ
ところで彼女ってどんなだった?
それより、彼女ってだれなんだ?
あれ、僕は誰なんだ?
悪魔が兎に聞きました
「お前、彼女を忘れてしまったのか?」
最後の嘘は悲しい程、兎が欲しかった一つの本当
散らかる部屋にキラキラ光る
冷たい椅子と黒い花
ぱたん
残酷で、冷たいお話
心を締め付ける思いで、二匹はその本を閉じました
中には古く褪せた写真が一枚
顔はぼやけて見えないけれども、どこか懐かしいのです
どうして懐かしいのか、どこで見かけたのか
思い出そうとはするけれども
どうにも思い出せません
黒い兎は写真を気味悪がって
白い兎から取り上げると
びりびり、びりびり
ちぎってゴミ箱に捨てました
本もそのまま、気分が悪いと
ご飯も食べずに布団に潜ったら
白い兎はひとりぼっちになりました
ゴミ箱の中からもう一度、散り散りになった写真を拾って
重ね合わせて見てみるけれど
やっぱりどうして思い出せなくて
無理に思い出そうとすると頭が痛くなりました
ずきずきと痛む頭を抱えてベットの布団に潜りこみました
隣で震える黒い兎
白い兎は聞きました
「どうしてそんなに震えてるの?」
黒い兎の手を掴むと
熱い体温、冷たい涙
言葉にできない何かに押しつぶされて
その体が震えていました
こんなに怖がる姿を見た事なんて
今まで一度も
今まで一度も?
白い兎は何かを思い出しそうになって
それがとても怖いものに思えて
黒い兎の手を強く握りました
「大丈夫、大丈夫、いつも一緒。ご飯も一緒、遊ぶも。眠るも。」
二匹はいつもより強く握り締めた手を離さないように
過ごした時間を確かめるように
涙が止まるまでたくさん泣きました
二匹の目は涙の中で真っ赤に真っ赤に色を染めました
白い兎と黒い兎
二匹は一緒、遊ぶも眠るも、泣くも笑うも
二匹はいつも一緒
今日も二匹に一冊の絵本
題名は「ウソノカタマリ」
嘘はついちゃだめだって
知ってるよ、知ってるんだ
それでも、つくしかなかったのは
本当がそこにあったから
一匹の兎は大事な恋人をなくしてしおれた花みたい
それを見た悪魔がしめしめと、兎に近寄り言いました
「お前が百個嘘を付いたら、その塊を俺が貰って、彼女とずっと一緒に居られるようにしてやるよ」
兎はとっても彼女が好きだったから
本当に本当に大好きだったから
毎日毎日嘘を付きました
帰ってくると悪魔がいて、ついた嘘を数えます
右手に持った小さな種が、嘘をつく度大きくなって
20個嘘をつく頃には、小さな枝が生えました
「こいつがやがて花が咲く。そしたらお前は彼女に会える」
兎の脳裏に彼女との日々
ごめんなさいとのかくれんぼ
いつまでたっても見つからないのは
もうごめんなさいがいないから
どんどんどんどん、嘘をついて
どんどんどんどん、大きくなる種
「まだまだもっと嘘をつけ。でないと彼女は帰ってこないぞ?」
悪魔が兎の背中を押します
真っ黒な尻尾はくるくると回り、まるで催眠術のよう
兎の目には彼女のまぼろし
部屋には彼女が帰ってくる日の為に
向かいに置かれた彼女の椅子
兎は冷たい椅子を抱きしめて
わんわんわんわん泣きました
「あぁ、苦しいよ。苦しいよ。それでも君に逢いたいよ」
涙で濡れた長い睫毛
撫でる手はあと嘘幾つ?
眠れない夜が続きました
食べられない日が続きました
それでも悪魔が待っている
そして彼女が待っている
やつれた体を隠す為
兎は黒いマントを買いました
けれどもそれがダメでした
皆がどんどん怖がって、なかなか嘘がつけません
兎は遠くに旅支度
知らない兎を騙すことにしました
それから何年、月日が流れて
太陽も月も星も雲も草も花も兎も
何もかもが大人からおじいさんになりました
兎は刻まれたシワに触れて思いました
幾つ嘘をついただろう?
種はもうじき花が咲くかな?
悪魔はどんな顔してるかな?
僕は何がしたかったんだ?
悪魔がそっと囁きました
「見ろ、もうじき花が咲く、彼女と一緒に居られるぞ」
そうだ、彼女が帰ってくるんだ
彼女に会いたくて嘘ついたんだ
ところで彼女ってどんなだった?
それより、彼女ってだれなんだ?
あれ、僕は誰なんだ?
悪魔が兎に聞きました
「お前、彼女を忘れてしまったのか?」
最後の嘘は悲しい程、兎が欲しかった一つの本当
散らかる部屋にキラキラ光る
冷たい椅子と黒い花
ぱたん
残酷で、冷たいお話
心を締め付ける思いで、二匹はその本を閉じました
中には古く褪せた写真が一枚
顔はぼやけて見えないけれども、どこか懐かしいのです
どうして懐かしいのか、どこで見かけたのか
思い出そうとはするけれども
どうにも思い出せません
黒い兎は写真を気味悪がって
白い兎から取り上げると
びりびり、びりびり
ちぎってゴミ箱に捨てました
本もそのまま、気分が悪いと
ご飯も食べずに布団に潜ったら
白い兎はひとりぼっちになりました
ゴミ箱の中からもう一度、散り散りになった写真を拾って
重ね合わせて見てみるけれど
やっぱりどうして思い出せなくて
無理に思い出そうとすると頭が痛くなりました
ずきずきと痛む頭を抱えてベットの布団に潜りこみました
隣で震える黒い兎
白い兎は聞きました
「どうしてそんなに震えてるの?」
黒い兎の手を掴むと
熱い体温、冷たい涙
言葉にできない何かに押しつぶされて
その体が震えていました
こんなに怖がる姿を見た事なんて
今まで一度も
今まで一度も?
白い兎は何かを思い出しそうになって
それがとても怖いものに思えて
黒い兎の手を強く握りました
「大丈夫、大丈夫、いつも一緒。ご飯も一緒、遊ぶも。眠るも。」
二匹はいつもより強く握り締めた手を離さないように
過ごした時間を確かめるように
涙が止まるまでたくさん泣きました
二匹の目は涙の中で真っ赤に真っ赤に色を染めました
白い兎と黒い兎
二匹は一緒、遊ぶも眠るも、泣くも笑うも
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