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2012

0725
白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

今日も二匹に一冊の絵本が届きました

題名は「オモイデモノオキ」

それはそれはむかしむかし

小さな小さな命が一つ

たった一つの思い出を守る為の冒険のお話

メルと呼ばれたその兎には、病気で物をすぐに忘れてしまうお母さん兎がいました

大事なお母さん兎の為に一生懸命努力したけれども

最後はメルの名前も忘れて、死んでしまいました


そんなメルの宝物は小さな箱に並べられた5つのリボン

これはお母さん兎がまだ元気だった頃ご褒美で貰ったもの

大事な大事なメルのお母さん兎との思い出でした


メルは自分の名前すら忘れてしまったお母さん兎を知っているので

自分もいつか忘れてしまうんじゃないかと心配になって

その箱を脇に抱えるとある噂を信じて飛び出しました

ーこの世のどこかに思い出をしまっておける物置がある。そこに入れた思い出はいつまでも消えず、いつでも、見に来るたびに思い出すことができるー

話では山の向こう、その先の沼の奥の洞穴の中

危険な事もあって普段は誰も近寄らない場所だそう

それでもメルには行くしかありませんでした


初めて入った山に向かう森の中は腐った気がそのままにされていたり

気持ち悪い虫や見たこともない動物だらけ

メルはすぐにこの森を抜けようと先を急ぎました

もうすぐ森を抜けルだろうと言う頃に

「ちょっと待ってくれないか?」

メルは誰かに呼び止められました

振り返るとそこには一匹のカラスがいました

見るとそのカラスは足を折ってしまって片足でぴょんぴょん

フラフラとして飛ぶこともできずにいました

言葉少なくても助けてあげたい気持ちになったメルは必死に看病しました

折れた足を固定する木を当てて、周りを見渡したけれど紐がありません

小さな箱の中には大切なリボン

メルは悩んだ挙句、カラスの為に一本だけリボンを使うことにしました


丁寧な看病のおかげで飛べるようになったカラスはお礼をしたいと

メルを片足で掴むとバタバタと羽根を震わせてメルを森の外まで運んでくれました

まだ痛んだ足ではうまく飛べず、それでも気持ちが嬉しかったメルはありがとうとお礼を言うと

リボンはあげることにして先を急ぎました


山は森に比べて景色は綺麗だけれども、危険は沢山

崩れやすい足場に、時折降る雨、空気も薄くてメルはぜーはーぜーはー

まだまだてっぺんは雲の中

気付けば夜も遅くなったので、今日はここで休もうと

メルは見つけた小さな洞穴に入るとその中で丸くなって眠る事にしました


すやすやと眠っていると

ごろごろごろ どがー!

大きな音で目を覚まして、外へ飛び出すと目の前には岩の山

崩れた岩が落ちてきて、道を塞いでしまいました

まだまだ先は長いのに、どうしたら良いのだろうと

メルは頭を抱えて悩みました

そんな足元を見ると岩の間に一匹のモグラがぐったりとしていました

岩の間に挟まれて動けなくなっているのを見てメルはその岩に手を伸ばしました

けれどもうちょっとの所で届かない

困ったメルは仕方なく、箱の中から黄色のリボンを取り出して

もうちょっとの距離をリボンで繋いで、モグラをひっぱりだしました

モグラは岩から抜け出ると、お礼に穴を掘って道を作ってくれました

大事なリボンは岩の中から引っ張る中でびりびりで、泥だらけ

そのままモグラにリボンをあげると、メルは先を急ぎました


山を下るともうすぐに沼が見えてきました

ジメジメとして空気も重たく、見渡すところにナメクジとカビだらけ

それを食べる変な色をしたマムシもうようよ

気持ち悪いのと怖いのでなかなか前に進めないでいると

前からカエルの夫婦がやってきました

見ると腕に二つの葉型がくっきりと

すぐにマムシに咬まれたのだと思ったメルは

もう迷うこともなく、箱の中の青と緑のリボンを取り出して

咬まれた腕から毒が回らないように、二匹の腕にきつく巻きつけて

傷口を吸い上げて毒を吐き出しました

しばらくして大分楽になったカエルの夫婦は、実は洞穴から帰るところで

お礼に、洞穴の場所を教えてくれました


辿りついた洞穴の中はひんやりとして疲れた体を優しく風が揺らします

ぽつんぽつんと落ちる水滴に垂れ下がった石の塊

その奥の奥に、ひときわ輝く小さな明かりを見つけてメルは引き寄せられるように、その場所へ向かいました

そこにはほこりを被った思い出だったであろうものが溢れていました

洋服や手紙、鍵付きの箱にきらきら輝く名前入りの指輪

だったもの

メルが見たのはその思い出がゴミのように詰まれた光景でした

光の下に集うホタル達が唄います

「思い出残しにやってきて、残した事を忘れたよ。なんて哀れな事でしょう?
森抜け、山越え、沼渡り。こんなに大変だったのに。それでもみんな忘れてく。
思い出すのはいつの日か?思い出すのはいつの日か。」

とても酷い歌でしたが、この景気にはぴったり

メルは箱を握り締めて泣き出してしまいました

零れた涙が箱に落ちると、メルにある思い出が飛び出しました


お母さん兎が一生懸命手帳に一日の事を書く姿

料理の最中に噴出した鍋を触って火傷して涙する姿

メルの名前を忘れないように、名前を何度も呼ぶ姿


思い出を一生懸命覚えていてもらおうと傍で支えるメル

それに答えるように満面の笑顔でリボンを渡すお母さん兎


絶えられなくて家を飛び出したメルに

帰って来て「忘れてしまおうね」と言って泣いて笑ったお母さん兎


一本のリボン詰められた思い出はきらきらと輝いて見えました

涙を拭いたメルが他の想い出に触れると

皆の思い出が同じようにきらきら輝きながら浮かんでは消えました


どんなに小さな想い出にも込められた思いがあるのなら

いつかきっと、この思いを返したいと、メルは一生懸命その思い出をメモに書き留めました

受け取り手のいない思い出だとしてもそれは変りません

メルは自分の命をここで過ごし、思い出を残すことに決めたのです


ヘトヘトになりながらも、一つ一つの思い出を書き残し

やがて何年の時間がすぎ、メルはやがておじいさんになりました


そして、最後にふれた思い出にメルは涙が止まりませんでした

一枚の手紙に込められた思い出

そこに映ったものは、おなかを撫でてにっこりと微笑むお母さん兎だったのです

ちぎれてぼろぼろで、字も読めないような手紙には

ここに来たお母さん兎の。覚えていけないと分かっても残しておきたかった

なによりも大事な思い出が残っていました

「母さんの思い出は全部消えてしまうものだとしても、もうそれで仕方なかったって。
僕、本当はすごく我慢してたんだよ。僕の名前も忘れた時に、僕はもういないと思ってた。
でも、僕はここにいたんだね。いて良かったんだね。僕は最後まで母さんと一緒にいれたんだね。」

沢山の思い出の詰まったメモ帳を抱えて、メルはその場で眠るように死にました

最後の思い出をメモでなく心に書き留めて

洞窟で骨になったメルはやがて砂のようにさらさらと崩れて形をなくし

残ったメモ達だけが残りました

それを一匹の兎が見つけて、思い出辞典として大事に村に置かれました


メモに込められた思い出には皆に思い出を伝えようと、ひたむきにもくもくと

映し出された記憶のかけらを幸せそうに眺める、一匹の兎が映っていましたとさ

おしまい


ぱたん


読み終わった絵本を抱えると、黒い兎は本棚に並ぶ沢山の絵本を眺めながら思いました


もう、何冊の絵本を白い兎と見てきただろう

沢山の絵本に感動して泣いて笑って

時には絵本のページを破ったり

絵本に絵を書き足したり

一緒に舐めた飴玉の味や広がるオーロラ

白と黒の花の絵にペンキの付いた顔

お互いのいいところも悪いところも沢山知ったよね

こんなに沢山の思い出を僕はちゃんと残せていけるかな?

白い兎はそれを覚えていてくれるかな?

一緒にどれだけ分かち合えるかな?

このまま変わらずにいたいけれど

僕たちもいつか変わっていくのかな

それとももう変わっているのかな?


いつもと変わらず料理を作る白い背中は

黒い兎を少しだけほっとさせました

のんびりと流れる時間の中で二匹一緒に過ごして

変わらないものが変わるまで

きっとこのままなんだろうと

見つめる目に映る今は変わらないこの光景をもっと大事にしていこうと


白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

そう信じた変わるはずのない今日を覚えて

変わり始める明日が来ることを忘れようとして

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