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2012

0725
白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

今日も二匹に一冊の絵本

題名は「フウセンフワリ」

ある村に一匹の兎がいました

小さくふわふわの毛玉だらけの兎で村の皆はその兎を「わたげ」と呼びました


ある日も、てくてくわたげが坂道を下っていると、いじめっ子達がやってきて、後ろからわたげを突き飛ばしました

コロコロ転がるわたげと道に舞う白い毛玉

いじめっ子は指差して言いました

「おい、わたげ!おまえのせいで道が毛だらけだ。ちゃんと掃除しろよな、ははは」

そう言うと道の毛玉を汚いものを見るように避けながら、倒れたわたげの横を去っていきました

坂道のおしまいで傷だらけのわたげは涙を流しながら坂に散らばる無数の毛玉を一つ一つ拾いあげていきました

登り切る頃には両手には、こぼれる程の毛玉

振り返る道には涙の足跡

傷口から流れた赤い細い道

ふと見上げると一件の家が見えました

噂ではあそこには頭のおかしいおじいさん兎が住んでいて、中に足を踏み入れるともう元の世界には帰れない

そんな話でした

「僕もうこんな世界にいたくない。いっそ、別の世界に行けるのなら」


ドアの前に立つわたげが見たのは落書きだらけのドア

「くたばれ」
「どっかいけ」
「しにがみ」
「めいわくだ」
「ふこうのいえ」

何度も上から皆が書き足すので読めるのはこれ位でしたが、それはもう、元の色がわからない位埋め尽くされていました

子供達が面白半分でつけた南京錠が

ぶらぶら、ぷらーん

ドアを押してみると、意外と簡単にドアは鈍い音をたてながら開きました

ぎぎぎぎー、ざずー

恐る恐るわたげは中に足を踏み入れると中には何に使うのか分からない機械がたくさんありました

ほこりをかぶって動くのかわからない機械に、そっと指をなぞると

えがおをつくるきかい

なみだをつくるきかい

なかなおりのきかい

びょうきをなおすきかい


見れば見るほど不思議な機械達の中で一つだけ丁寧に磨かれたピカピカの機械がありました

わたげが近づいてそれを確かめに行くと

「その機械にふれるでない!」

大きな声に心臓が止まる程驚いたわたげは、勢いよく転んでしまいました

後ろを振り向くとそこには杖をついたおじいさん兎がいました


「ごめんなさい!何もしないから、僕をあっちに連れていかないで!」

他の世界に行けるなら、と思ってたのに

とっさに出た自分の一言にびっくりしましたが、それより驚いたのはそれを聞いたおじいさん兎でした

「な、なんじゃ?その話は! あっちの世界?そんな機械があるのか!教えてくれ、それはすごい発明じゃ」

話が噛み合っていない二匹はその後事情を話すと

おじいさん兎はわたげの傷を手当てして、頭をかきながら

「そんな作り話までできるとは、わしは一体何者じゃて」

白い毛並みから、ふけが舞います

わたげはそれを見て

「僕と一緒だ、白いの飛ぶ」

おじいさん兎もそれに気づくと

二匹は顔を見合わせてげらげら笑い合いました

それからしばらくの間

わたげはおじいさんと一緒に生活をはじめました

怖いと思う気持ちは自然となくなり、いつしか本当の家族のようになっていました


そんなある日、わたげはふとここに来た理由を思い出し、また悩むようになりました

この世界にいてもいつかきっと嫌な思いをする

またさみしくなる

そう思ったら、また止まったはずの涙が流れてきました

おじいさん兎にその事を話すと

おじいさん兎は震える体を抱きしめて

「おまえの目は素直な目だ、逃げずにちゃんと見たから怖いと思えた。
おまえの目はどんな誰よりもまっすぐで大事な事を知ってる。
いつかきっと晴れるさ、おまえがその目を濁さずにまっすぐ歩くだけで」


おじいさん兎はわたげを連れて裏庭に行きました

一台の古びた空気入れがあって、まわりにはタンポポ畑

一つ風船を手にとりおじいさん兎が空気いれで膨らますと紙を一枚手渡しました

「それに願い事を書いてごらん」

わたげはそこに、明るい世界が見えますように、と書いておじいさん兎に返しました

手際よくそれを紐にくくりつけて

「お空の誰かさん、この願いを叶えておくれ」

ぱっと手を離すと風船は空高く飛んで行き、雲の中に消えて行きました

おまえのもやもやも一緒に飛ばしてやった、とげらげら笑いながらおじいさん兎はわたげの頭を撫でました


それからわたげは気持ちの晴れぬ時は風船を飛ばして、だんだんと前向きな自分になって行きました


が、おじいさん兎は大分体が弱くなり、そのうち、わたげは看病するばかりになりました

心配になったわたげはその日から

じいちゃんの病気が治ります様に、と紙に書いては風船を飛ばしはじめました

一つでは足りないと思い、次の日は二つ、次の日は三つと、数も増えて行きました

けれど、おじいさん兎がよくなる事はなく、やがて風船も最後の一個になりました

おじいさん兎は言いました

「もう、わしのことはええ。最後の一個は自分の為に使いなさい」


おじいさん兎はその日の夜に深い眠りについたまま、もう目を開けてはくれませんでした

わたげは静かに眠るおじいさん兎を抱きかかえると、たんぽぽ畑の真ん中に毛布に包んで埋めてあげました

大事にしてたぼろぼろの杖に膨らんだ最後の風船をくくりつけて

お墓の代わりに立てるとお願いをしました

「あっちの世界は晴れていますか?
もし雨が降るのなら傘を渡してあげてください。
風が強いなら支えてあげてください。
どうか、幸せになってください。」


びゅーん、ひゅるるー


強い風が吹いてたんぽぽのわたげが舞ったかと思うと

杖の周りに集まって不思議な事が起こりました

風船がふわりと浮かんだかと思うと

重たい杖をくくりつけたまま空に浮かんだのです

たんぽぽのわたげが杖の周りを飛びながら

まるでそれを手伝う様に杖と風船は空高く飛んで行きました

その時、わたげには見えたのです

飛んでいくたんぽぽのわたげに、ついているはずのない白い羽が

きっとあれは妖精

おまじないは本当だったよ、青空を見上げて、わたげはおじいさん兎に言いました


ぱたん


二匹は物語を読み終えて、お互いの目を見合いました

「まっすぐ素直な目、してる?」

黒い兎は尋ねました

白い兎は首を縦に大きく振って

「もちろん、あなたほどお人好しなら、そりゃもうまっすぐ」

黒い兎は褒められたのかちょっと不満げでしたが、ありがとうと言いました

そして、白い兎の目を見て

「君もきっとまっすぐだよ。どんな事からも逃げなかった、強くてまっすぐな目」

白い兎は照れ臭そうに笑うと、ぷいっと後ろを向いて窓を開けました

すると、とってもいい天気

晴れ晴れとした空を眺めて、きっとおじいさん兎は幸せになれて、わたげもこんな青空をみてるよね?と心の中で呟きました

空にはたんぽぽのわたげがふわりふわりと、晴れた空に気持ちよく舞っていました

白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

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