2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
今日はエイプリルフール
黒い兎は洗い物を終えて
本を読んでいる白い兎に言いました
「ねぇ、面白いお話聞かせてあげようか?」
白い兎は呼んでいた本を閉じると
「どんなお話?」
黒い兎はお気に入りの椅子に腰掛けると
「今からするのは嘘のお話です」
そう言って一呼吸するとゆっくりと話し始めました
あるところに三匹の兎がいました
名前は「ロア」「ロイ」「ローエ」
年上の明るいロアと年下の恥かしがりやのロイ、それと幼馴染の女の子「ローエ」
そんな三匹のお話です
三匹の住む村は山奥にある小さな炭鉱で
黒い煙がいつもモクモク
仕事で来る大人が多い村で
唯一小さな三匹はいつも可愛がられていました
特にロアは大人勝りな力持ち
人手が足りない時には手伝いを頼まれる
そんな皆から頼られる存在でした
そんなロアに憧れているロイはいつも
ロアの後ろにいつも引っ付いて
重い荷物を運ぶ姿を見るのが大好き
いつか自分もロアみたいになりたいと思っていました
ローエはそんな二匹のお姉さんのような存在で
疲れて帰ってきた皆にご飯を持っていったり
汚れた服を洗濯したり、布団を用意したりと
彼女のおかげで皆も仕事で愚痴をこぼしたりしません
ロアとローエは生まれた頃からの仲良しで
そこにロイが来てからは三匹でよく一緒にいることが多くなりました
ロアとローエは仕事の事を忘れて楽しくおしゃべり
ロイはいつもロアの後ろで楽しそうに話す二匹を眺めていました
その日は好きな時間の話をしていて
ロアはこう言いました
「俺は断然仕事してる時だな、汗流して仕事して、こんなに気持ちいいとは思ってなかったし」
続けてローエが言います
「じゃあ、私はそんなロアやみんなが作ったご飯を美味しそうに食べてるときかな、本当においしそうに食べるよね」
そうかな、とロアが笑い
そうよ、とローエが笑顔で答えます
「ロイ君の好きな時間は?」
ローエがロアの後ろに隠れるように座っていたロイに、顔を近づけて聞きました
ロイは肩をピクッとさせてしばらくローエを見つめると
慌てるようにくるっと振り向いて
バタバタと走って行ってしまいました
「あーあ。まただわ。私、嫌われているのかな」
ローエは唇を一文字にして困った表情をしました
「そんなことないだろ。きっと恥かしいだけだって」
ローエの背中をポンと叩くとロアはローエを励ましました
その頃ロイは家のベッドの中で膝を抱えていました
家に逃げ込むようにドアも閉めずに
簡単な事なのにどうして言えないんだろう
あんなに優しくしてくれてるのに
どうして伝えられないんだろう
一人で考えても答えなんてでないのに
ロアならきっとこんな風にはならないのに
そんな時、ふとカレンダーに目をやると
日付は3月31日
明日はエイプリルフール
本当の気持ちを素直に伝えられないなら
この日に嘘も混ぜたら少しは伝えられるかも
きっと笑って僕の事も分かってくれて
そこから仲良くなれるかも
そう思ったロイは顔を見て伝えるのは難しいと思い
机の中から便箋を一枚取り出すと
ローエ宛に、こう書きました
「この手紙は嘘の手紙です
僕はローエの事が大好きです
いつも優しくて、僕と遊んでくれてありがとう
仲良く早くなりたいのに話せなくてごめんなさい
僕の好きな時間はロアとローエと遊んでいる時間です
ずっと仲良しでいてください
全部嘘だけどね」
書き終えるとその日は手紙を抱いてロイは眠りにつきました
次の日の朝早くにローエのポストに手紙を入れると
なんだか大きな任務を終えたような
そんな達成感でいっぱいになり
ロイは力いっぱい拳を握り締めると
吐く息も荒く駆け足で家に帰りました
「ローエ手紙だよ!」
お母さん兎から手紙を受け取ると
ロイからの手紙を中から取り出して
嘘の手紙を読んでいきます
「これは嘘の手紙?なるほど、エイプリルフールね」
最初に書いたら嘘ついてるのばればれじゃない
ローエはクスクス笑うと続きを読もうとしたのですが
「ローエの事が大好き、って大嫌いって事?」
最初は何かの間違いだと思いました
でも次の文も次の文も
どれも逆にしたら悲しくなるものばかり
やっぱり私は嫌われてたんだと
ローエはとても悲しくなり
最後まで読むことができなくなり
手紙を握り締めて部屋にこもってしまいました
そんなことは知らないロイは
喜ぶローエを想像しながらロアの所へ行きました
するといつも一緒に居るはずのローエがいないので
どうしたのか聞いてみると
なんだか手紙を読んでから部屋にこもってると言うのです
ロイはその手紙は自分が書いたものだと伝え
喜んでくれているはずだと思っていたので
どうしたのか分からなくなり
ロアに頼んで一緒にローエの家に行くことにしました
トントンとノックをすると中からお母さん兎が現れて
二匹をローエの部屋まで案内してくれました
「おーい、ローエ?俺だ、ロアだけど。どうしたんだよ?」
ドアを開けてみるとそこには、泣いているローエがいました
手にはロイからの手紙を握ったまま
「あ、あれ。僕の。僕の手紙」
ロイの声に気付きローエは振り向くと
「ロイ!どうしてこんな手紙書いたの!嫌いなら嫌いって言えばいいのに!」
と泣き叫びました
「え?嫌いなんて書いて」
最後まで言うより先に
「この手紙を読んでそんな風に思うわけないじゃない!」
と手紙を半分に破り、ロイに投げつけました
唖然とするロイを尻目にロアがその手紙を拾いました
半分になった手紙を重ね合わせてロアはその手紙をじっくり読みました
そして最後まで読んで大笑い
「何がおもしろいの!ロアも酷い!もう皆大嫌い!」
さらに泣き出すローエの背中を叩くと
ロアはこう言いました
「ローエ、ちゃーんと最後まで読んでみろよ。それにロイ。お前もお前だ。」
涙を拭いて肩をヒクヒクさせながら
もう一度手紙をローエは読んでみました
「やっぱりどう読んだって私の事嫌いってなるじゃない」
ローエはロアに言いました
「いやいや、最後、最後」
ロアは最後の一文を指差しました
:全部嘘だけどね:
「全部嘘?それがなんなの!知ってるよ!嘘の手紙って書いてあるんだから」
ロアはまだ分からないのかと、ため息をつくと
自分の傍にロイを連れて行き、自分で説明するように言いました
ロイはロアの洋服の裾をつかみながら、びくびくしながら言いました
「嘘の手紙。それも嘘だからこれは本当の手紙なんだよ、って。
そう言いたくて。でも素直に大好きって言えなくて、
最後に書いて分からなかったらって考えたら怖かったから。
僕。僕。大好きなんだよ。本当は凄く、ローエさんの事、大好きなんだよ」
言い終えると同時にロイはローエに飛びつきました
「ははは。ったく、言えんじゃねーか、ロイ。よく言えた!だから、な?ローエも許してやれよ?」
抱きつくロイの頭を撫でながら、ローエは何度も深く頷きました
それから三匹は幸せに暮らし
ずっと仲良く過ごしていきました、とさ。
「おーしまい」
白い兎はよくできた話だね、と関心して
ふと一つ疑問が浮かびました
「この話のどこが嘘だったの?嘘の手紙は分かるけど話は嘘じゃないじゃない?」
黒い兎に不思議そうに尋ねると、椅子から立ち上がり説明を始めました
「それじゃあ発表するね。一つはこれ」
机の下から一冊の絵本を取り出すと、その本を白い兎に渡しました
題名は「ウソツタエ」
「もしかして、これ?」
白い兎のはっとした顔をよそに
「そう。実は今日の朝、この本が届いてたの。それが一つ目の嘘」
そしてもう一つ、そう言いながら本を開くと
手紙に悲しんだローエが、悲しみに耐えられず
村を飛び出し、手紙は焼却炉で燃やされてしまう
ロイは急いでロアに手紙の事を伝えたけれども
もうそれはローエがいなくなった後で、嘘はもうだめだと
ロアがロイの頭を撫でる、それでおしまいになっていました
「こんなお話じゃ、かわいそうだからね。僕が途中から作り変えました。以上」
得意げな顔をした黒い兎を見て
「すごいよ、ねぇ、作家になれるんじゃない?本書いてみたら?」
と白い兎は言いました
まんざらでもない顔をして、悩んでいる姿をみて
白い兎は、くすくす笑うと
「嘘だよ、嘘。ずっと今のまんまでいいよ、変らないでそのまんま」
黒い兎は嘘なのかーと少し残念な顔をしました
白い兎は思ったのです
こんな悲しいお話を幸せな話にしてくれる
もし全部自分で作った作品ができたら
誰にも見せないで自分だけに話して欲しい
そんな風に思ったからです
これは内緒の内緒の嘘
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
二匹はいつも一緒
今日はエイプリルフール
黒い兎は洗い物を終えて
本を読んでいる白い兎に言いました
「ねぇ、面白いお話聞かせてあげようか?」
白い兎は呼んでいた本を閉じると
「どんなお話?」
黒い兎はお気に入りの椅子に腰掛けると
「今からするのは嘘のお話です」
そう言って一呼吸するとゆっくりと話し始めました
あるところに三匹の兎がいました
名前は「ロア」「ロイ」「ローエ」
年上の明るいロアと年下の恥かしがりやのロイ、それと幼馴染の女の子「ローエ」
そんな三匹のお話です
三匹の住む村は山奥にある小さな炭鉱で
黒い煙がいつもモクモク
仕事で来る大人が多い村で
唯一小さな三匹はいつも可愛がられていました
特にロアは大人勝りな力持ち
人手が足りない時には手伝いを頼まれる
そんな皆から頼られる存在でした
そんなロアに憧れているロイはいつも
ロアの後ろにいつも引っ付いて
重い荷物を運ぶ姿を見るのが大好き
いつか自分もロアみたいになりたいと思っていました
ローエはそんな二匹のお姉さんのような存在で
疲れて帰ってきた皆にご飯を持っていったり
汚れた服を洗濯したり、布団を用意したりと
彼女のおかげで皆も仕事で愚痴をこぼしたりしません
ロアとローエは生まれた頃からの仲良しで
そこにロイが来てからは三匹でよく一緒にいることが多くなりました
ロアとローエは仕事の事を忘れて楽しくおしゃべり
ロイはいつもロアの後ろで楽しそうに話す二匹を眺めていました
その日は好きな時間の話をしていて
ロアはこう言いました
「俺は断然仕事してる時だな、汗流して仕事して、こんなに気持ちいいとは思ってなかったし」
続けてローエが言います
「じゃあ、私はそんなロアやみんなが作ったご飯を美味しそうに食べてるときかな、本当においしそうに食べるよね」
そうかな、とロアが笑い
そうよ、とローエが笑顔で答えます
「ロイ君の好きな時間は?」
ローエがロアの後ろに隠れるように座っていたロイに、顔を近づけて聞きました
ロイは肩をピクッとさせてしばらくローエを見つめると
慌てるようにくるっと振り向いて
バタバタと走って行ってしまいました
「あーあ。まただわ。私、嫌われているのかな」
ローエは唇を一文字にして困った表情をしました
「そんなことないだろ。きっと恥かしいだけだって」
ローエの背中をポンと叩くとロアはローエを励ましました
その頃ロイは家のベッドの中で膝を抱えていました
家に逃げ込むようにドアも閉めずに
簡単な事なのにどうして言えないんだろう
あんなに優しくしてくれてるのに
どうして伝えられないんだろう
一人で考えても答えなんてでないのに
ロアならきっとこんな風にはならないのに
そんな時、ふとカレンダーに目をやると
日付は3月31日
明日はエイプリルフール
本当の気持ちを素直に伝えられないなら
この日に嘘も混ぜたら少しは伝えられるかも
きっと笑って僕の事も分かってくれて
そこから仲良くなれるかも
そう思ったロイは顔を見て伝えるのは難しいと思い
机の中から便箋を一枚取り出すと
ローエ宛に、こう書きました
「この手紙は嘘の手紙です
僕はローエの事が大好きです
いつも優しくて、僕と遊んでくれてありがとう
仲良く早くなりたいのに話せなくてごめんなさい
僕の好きな時間はロアとローエと遊んでいる時間です
ずっと仲良しでいてください
全部嘘だけどね」
書き終えるとその日は手紙を抱いてロイは眠りにつきました
次の日の朝早くにローエのポストに手紙を入れると
なんだか大きな任務を終えたような
そんな達成感でいっぱいになり
ロイは力いっぱい拳を握り締めると
吐く息も荒く駆け足で家に帰りました
「ローエ手紙だよ!」
お母さん兎から手紙を受け取ると
ロイからの手紙を中から取り出して
嘘の手紙を読んでいきます
「これは嘘の手紙?なるほど、エイプリルフールね」
最初に書いたら嘘ついてるのばればれじゃない
ローエはクスクス笑うと続きを読もうとしたのですが
「ローエの事が大好き、って大嫌いって事?」
最初は何かの間違いだと思いました
でも次の文も次の文も
どれも逆にしたら悲しくなるものばかり
やっぱり私は嫌われてたんだと
ローエはとても悲しくなり
最後まで読むことができなくなり
手紙を握り締めて部屋にこもってしまいました
そんなことは知らないロイは
喜ぶローエを想像しながらロアの所へ行きました
するといつも一緒に居るはずのローエがいないので
どうしたのか聞いてみると
なんだか手紙を読んでから部屋にこもってると言うのです
ロイはその手紙は自分が書いたものだと伝え
喜んでくれているはずだと思っていたので
どうしたのか分からなくなり
ロアに頼んで一緒にローエの家に行くことにしました
トントンとノックをすると中からお母さん兎が現れて
二匹をローエの部屋まで案内してくれました
「おーい、ローエ?俺だ、ロアだけど。どうしたんだよ?」
ドアを開けてみるとそこには、泣いているローエがいました
手にはロイからの手紙を握ったまま
「あ、あれ。僕の。僕の手紙」
ロイの声に気付きローエは振り向くと
「ロイ!どうしてこんな手紙書いたの!嫌いなら嫌いって言えばいいのに!」
と泣き叫びました
「え?嫌いなんて書いて」
最後まで言うより先に
「この手紙を読んでそんな風に思うわけないじゃない!」
と手紙を半分に破り、ロイに投げつけました
唖然とするロイを尻目にロアがその手紙を拾いました
半分になった手紙を重ね合わせてロアはその手紙をじっくり読みました
そして最後まで読んで大笑い
「何がおもしろいの!ロアも酷い!もう皆大嫌い!」
さらに泣き出すローエの背中を叩くと
ロアはこう言いました
「ローエ、ちゃーんと最後まで読んでみろよ。それにロイ。お前もお前だ。」
涙を拭いて肩をヒクヒクさせながら
もう一度手紙をローエは読んでみました
「やっぱりどう読んだって私の事嫌いってなるじゃない」
ローエはロアに言いました
「いやいや、最後、最後」
ロアは最後の一文を指差しました
:全部嘘だけどね:
「全部嘘?それがなんなの!知ってるよ!嘘の手紙って書いてあるんだから」
ロアはまだ分からないのかと、ため息をつくと
自分の傍にロイを連れて行き、自分で説明するように言いました
ロイはロアの洋服の裾をつかみながら、びくびくしながら言いました
「嘘の手紙。それも嘘だからこれは本当の手紙なんだよ、って。
そう言いたくて。でも素直に大好きって言えなくて、
最後に書いて分からなかったらって考えたら怖かったから。
僕。僕。大好きなんだよ。本当は凄く、ローエさんの事、大好きなんだよ」
言い終えると同時にロイはローエに飛びつきました
「ははは。ったく、言えんじゃねーか、ロイ。よく言えた!だから、な?ローエも許してやれよ?」
抱きつくロイの頭を撫でながら、ローエは何度も深く頷きました
それから三匹は幸せに暮らし
ずっと仲良く過ごしていきました、とさ。
「おーしまい」
白い兎はよくできた話だね、と関心して
ふと一つ疑問が浮かびました
「この話のどこが嘘だったの?嘘の手紙は分かるけど話は嘘じゃないじゃない?」
黒い兎に不思議そうに尋ねると、椅子から立ち上がり説明を始めました
「それじゃあ発表するね。一つはこれ」
机の下から一冊の絵本を取り出すと、その本を白い兎に渡しました
題名は「ウソツタエ」
「もしかして、これ?」
白い兎のはっとした顔をよそに
「そう。実は今日の朝、この本が届いてたの。それが一つ目の嘘」
そしてもう一つ、そう言いながら本を開くと
手紙に悲しんだローエが、悲しみに耐えられず
村を飛び出し、手紙は焼却炉で燃やされてしまう
ロイは急いでロアに手紙の事を伝えたけれども
もうそれはローエがいなくなった後で、嘘はもうだめだと
ロアがロイの頭を撫でる、それでおしまいになっていました
「こんなお話じゃ、かわいそうだからね。僕が途中から作り変えました。以上」
得意げな顔をした黒い兎を見て
「すごいよ、ねぇ、作家になれるんじゃない?本書いてみたら?」
と白い兎は言いました
まんざらでもない顔をして、悩んでいる姿をみて
白い兎は、くすくす笑うと
「嘘だよ、嘘。ずっと今のまんまでいいよ、変らないでそのまんま」
黒い兎は嘘なのかーと少し残念な顔をしました
白い兎は思ったのです
こんな悲しいお話を幸せな話にしてくれる
もし全部自分で作った作品ができたら
誰にも見せないで自分だけに話して欲しい
そんな風に思ったからです
これは内緒の内緒の嘘
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
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