2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「ニジミサイン」
それはある小さな村でのこと
その村の兎達は皆、いつも首に掲示板をぶら下げていて
誰かと挨拶をするときにその掲示板にサインを書き合うのがルールになっていました
皆、このルールのおかげで名前を覚えられたり、仲良くなるのも早くなって
とっても幸せそうに暮らしていました
その村に住む村一番美しい兎、クーアの元には
毎日沢山の兎が挨拶をしに来てくれて
掲示板はいつも沢山のサインでいっぱいでした
そんな姿を遠くから見つめる兎がいました
彼の名前はアールと言います
アールはとってもクーアの事が大好きで
だけど、遠くから眺めているだけでとっても満足
緊張して傍で喋られなくて
彼女を困らせたりしたら、と思うだけで
今のままのが幸せだと思っていたのです
その日も彼女が掲示板をいっぱいにして
家の中に帰るまで、その姿を眺めては
彼女の姿に見とれていました
「はぁ、本当に綺麗だなー。きっと皆に書いている字も綺麗なんだろうなー」
頭の中で彼女の字を想像して、ぼーっと空を眺めて歩いていると
ごつん
前を良く見ないで歩いていたのでアールは彼女の家から帰る兎にぶつかってしまいました
「いててて、ちゃんと前見て歩いてくれよな、もう」
ぶつかった兎は丸くもったりとしたお尻の泥を払いながら言いました
「ごめんなさい、うっかりしていて。あ、掲示板が」
転んだ拍子にお互いの掲示板が首からすぽっと落ちてしまい
掲示板はばらばらになってしまいました
なんだかとっても申し訳ない気持ちになって
アールは急いで掲示板をかき集めると
ごめんなさい、と頭を下げてその場を逃げるように去っていきました
おうちに戻り、ばらばらになった掲示板を寄せ集めて
少しづつ整理をしていると
一枚だけ見知らぬ紙が挟まっていました
多分間違えて持って帰って来てしまったんだと
気の弱いアールの頭の中はもうパニック状態で
あっちにうろうろ
こっちにうろうろ
「あ、そうだ!掲示板にはサインが書いてあるんだ、それさえ分かれば返せるぞ」
掲示板にはしっかりサインが書いてあって
下には挨拶した兎たちのサインがいくつか書いてありました
結構沢山のサインが載っていて
これならちょっと聞けばすぐに見つかると
アールはほっと胸をなでおろしました
自分の知り合いが載っているのではと目線を下に下ろしていくと
そこには彼女のサインがあったのです
「クーア?」
心臓が一瞬止まった後
今度は、物凄いスピードで急発進しました
ドクドク ドドクン
ドドクン ドックン
想像していたよりもずっと、綺麗で柔らかい字で書かれたサインを見て
アールの心は幸せの絶頂でした
でも、これはあの兎のもの
彼だって大事にしているに違いない
でも
いざ目の前にしてしまうと、それが欲しくて仕方なくなって
アールはいてもたってもいられなくなりました
「あ、そうだ。これなら誰にも迷惑はかからない」
思いついたのは見つけたクーアのサインを
自分の掲示板に写し書くことでした
昨日の掲示板にそっとクーアのサインを下にひくと
そっと、そのサインを写し書きました
出来上がった掲示板を見て
アールはふと不安になりました
もし、昨日彼女の近くにいた兎達に見つかって
書いてもらってないと責められたらどうしよう、と
そこでアールは、その前日も、その前日も、と
ここ何日間の掲示板にサインを写しました
これでもう大丈夫、と一安心して眠りにつきました
翌朝、掲示板の持ち主を探す為に外に出ると
クーアの家に集まった兎の近くで彼を見つけました
アールが彼に声をかけようと近づくと
沢山の兎達にもみくちゃにされて
持っていた掲示板を、また落としてしまいました
拾い上げた兎がそれを見つけて返そうとした時
「お前?こんなに前から何回も。いつサイン書いてもらいにきてたんだ?」
前から何度も来ていた兎はとっても不思議そうにアールの顔を覗き込みました
適当ないいわけをしてやり過ごそうとアールは、前からいたよ、と答えると
「じゃあ、クーアさんの掲示板にもお前のサインがあるんだな?」
そうでした
挨拶したらお互いの掲示板にサインが残るので
自分のところだけにサインがあるというのは不自然で
嘘をついたのがばれてしまいます
もうおしまいだ、そう思ったときに、周りの皆が一瞬ざわめくと
目の前にクーアが立っていました
「サイン書いてありますよ。ね?アールさん」
掲示板にはアールの字でサインも書いてあります
何かの聞き間違いかと耳を疑いましたが
目の前にはあれほど遠くにいたクーアがいたのです
アールを疑った兎も、クーアが言うならと引き下がり
無事、その場のいざこざはおしまいを迎えました
皆が帰った後
アールとクーアの二匹が残りました
アールはどうして自分のサインを知っているのか尋ねると
クーアはクスクスっと笑うと、部屋の奥から一匹の兎を呼びました
出てきた兎はアールが昨日ぶつかった兎でした
「これ、わたしの弟なのよ。」
クーアは、弟の頭を撫でながら挨拶をさせました
アールは持っていた彼の掲示板を差し出すと
弟も一枚の掲示板を差し出しました
それは自分のサインの書かれた掲示板でした
「ずっと前から遠くでいつも会いに来てくれてたでしょ?」
クーアは前からアールの事を知っていて
外でサインを書くたびに、来ているか見ていてくれたのです
弟が帰って来て、知らない人の掲示板を間違えてもらってきた、と言った時に
ふと、アールの事を思い出して、弟にぶつかった相手の事を聞いたそうです
そして、それがいつも会いにきてくれたアールの事だとわかり
自分の掲示板に写し書きしたのです
そう、アールがしたのと同じように
自分の事を知っていたのが
恥ずかしくって、嬉しくって
アールはあたふたしていると
クーアが掲示板を差し出して言いました
「今までも、これからも、わたし達友達。さ、サインを書いて」
アールが書いたサインの上に嬉し涙が一粒ポロリ
滲んだ文字の最初のサイン
クーアはそれを見て
「誰にも真似できないサインになったね」
と微笑みました
パタン
「ふふふ、なんか可愛いお話」
白い兎はクスクス笑いました
黒い兎は納得のいかない顔で
「なんか、意気地のない兎だなー。初めから声かければよかったんじゃないの?」
と不満気に言葉を零しました
読み終わった絵本を棚に戻し帰ってくると
白い兎がなにやら眺めて、またクスクス笑っているので
後ろから何を見ているのか覗くと
それは二匹が出会ったときの写真でした
「ねぇ?覚えてる?このときの事」
黒い兎は覚えてないと誤魔化したけれど
白い兎はしっかり覚えています
ある集まりの最中、黒い兎がなかなか周りに馴染めなくて
なんとかやり過ごそうと寝た振りをしていたところを
白い兎にまんまと見抜かれて
白い兎は周りの友達にカメラを渡して
黒い兎の肩に寄りかかって一緒に寝た振り
照れて真っ赤なほっぺたは隠すことが出来なくて
その写真の二匹は眠っているように見えて
黒い兎のほっぺただけ真っ赤
それはまるで
クーアとアールの様
二匹もわたし達みたいに幸せでありますように
白い兎は心の中でお願いしました、とさ
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
二匹はいつも一緒
今日も二匹の元に一冊の絵本
題名は「ニジミサイン」
それはある小さな村でのこと
その村の兎達は皆、いつも首に掲示板をぶら下げていて
誰かと挨拶をするときにその掲示板にサインを書き合うのがルールになっていました
皆、このルールのおかげで名前を覚えられたり、仲良くなるのも早くなって
とっても幸せそうに暮らしていました
その村に住む村一番美しい兎、クーアの元には
毎日沢山の兎が挨拶をしに来てくれて
掲示板はいつも沢山のサインでいっぱいでした
そんな姿を遠くから見つめる兎がいました
彼の名前はアールと言います
アールはとってもクーアの事が大好きで
だけど、遠くから眺めているだけでとっても満足
緊張して傍で喋られなくて
彼女を困らせたりしたら、と思うだけで
今のままのが幸せだと思っていたのです
その日も彼女が掲示板をいっぱいにして
家の中に帰るまで、その姿を眺めては
彼女の姿に見とれていました
「はぁ、本当に綺麗だなー。きっと皆に書いている字も綺麗なんだろうなー」
頭の中で彼女の字を想像して、ぼーっと空を眺めて歩いていると
ごつん
前を良く見ないで歩いていたのでアールは彼女の家から帰る兎にぶつかってしまいました
「いててて、ちゃんと前見て歩いてくれよな、もう」
ぶつかった兎は丸くもったりとしたお尻の泥を払いながら言いました
「ごめんなさい、うっかりしていて。あ、掲示板が」
転んだ拍子にお互いの掲示板が首からすぽっと落ちてしまい
掲示板はばらばらになってしまいました
なんだかとっても申し訳ない気持ちになって
アールは急いで掲示板をかき集めると
ごめんなさい、と頭を下げてその場を逃げるように去っていきました
おうちに戻り、ばらばらになった掲示板を寄せ集めて
少しづつ整理をしていると
一枚だけ見知らぬ紙が挟まっていました
多分間違えて持って帰って来てしまったんだと
気の弱いアールの頭の中はもうパニック状態で
あっちにうろうろ
こっちにうろうろ
「あ、そうだ!掲示板にはサインが書いてあるんだ、それさえ分かれば返せるぞ」
掲示板にはしっかりサインが書いてあって
下には挨拶した兎たちのサインがいくつか書いてありました
結構沢山のサインが載っていて
これならちょっと聞けばすぐに見つかると
アールはほっと胸をなでおろしました
自分の知り合いが載っているのではと目線を下に下ろしていくと
そこには彼女のサインがあったのです
「クーア?」
心臓が一瞬止まった後
今度は、物凄いスピードで急発進しました
ドクドク ドドクン
ドドクン ドックン
想像していたよりもずっと、綺麗で柔らかい字で書かれたサインを見て
アールの心は幸せの絶頂でした
でも、これはあの兎のもの
彼だって大事にしているに違いない
でも
いざ目の前にしてしまうと、それが欲しくて仕方なくなって
アールはいてもたってもいられなくなりました
「あ、そうだ。これなら誰にも迷惑はかからない」
思いついたのは見つけたクーアのサインを
自分の掲示板に写し書くことでした
昨日の掲示板にそっとクーアのサインを下にひくと
そっと、そのサインを写し書きました
出来上がった掲示板を見て
アールはふと不安になりました
もし、昨日彼女の近くにいた兎達に見つかって
書いてもらってないと責められたらどうしよう、と
そこでアールは、その前日も、その前日も、と
ここ何日間の掲示板にサインを写しました
これでもう大丈夫、と一安心して眠りにつきました
翌朝、掲示板の持ち主を探す為に外に出ると
クーアの家に集まった兎の近くで彼を見つけました
アールが彼に声をかけようと近づくと
沢山の兎達にもみくちゃにされて
持っていた掲示板を、また落としてしまいました
拾い上げた兎がそれを見つけて返そうとした時
「お前?こんなに前から何回も。いつサイン書いてもらいにきてたんだ?」
前から何度も来ていた兎はとっても不思議そうにアールの顔を覗き込みました
適当ないいわけをしてやり過ごそうとアールは、前からいたよ、と答えると
「じゃあ、クーアさんの掲示板にもお前のサインがあるんだな?」
そうでした
挨拶したらお互いの掲示板にサインが残るので
自分のところだけにサインがあるというのは不自然で
嘘をついたのがばれてしまいます
もうおしまいだ、そう思ったときに、周りの皆が一瞬ざわめくと
目の前にクーアが立っていました
「サイン書いてありますよ。ね?アールさん」
掲示板にはアールの字でサインも書いてあります
何かの聞き間違いかと耳を疑いましたが
目の前にはあれほど遠くにいたクーアがいたのです
アールを疑った兎も、クーアが言うならと引き下がり
無事、その場のいざこざはおしまいを迎えました
皆が帰った後
アールとクーアの二匹が残りました
アールはどうして自分のサインを知っているのか尋ねると
クーアはクスクスっと笑うと、部屋の奥から一匹の兎を呼びました
出てきた兎はアールが昨日ぶつかった兎でした
「これ、わたしの弟なのよ。」
クーアは、弟の頭を撫でながら挨拶をさせました
アールは持っていた彼の掲示板を差し出すと
弟も一枚の掲示板を差し出しました
それは自分のサインの書かれた掲示板でした
「ずっと前から遠くでいつも会いに来てくれてたでしょ?」
クーアは前からアールの事を知っていて
外でサインを書くたびに、来ているか見ていてくれたのです
弟が帰って来て、知らない人の掲示板を間違えてもらってきた、と言った時に
ふと、アールの事を思い出して、弟にぶつかった相手の事を聞いたそうです
そして、それがいつも会いにきてくれたアールの事だとわかり
自分の掲示板に写し書きしたのです
そう、アールがしたのと同じように
自分の事を知っていたのが
恥ずかしくって、嬉しくって
アールはあたふたしていると
クーアが掲示板を差し出して言いました
「今までも、これからも、わたし達友達。さ、サインを書いて」
アールが書いたサインの上に嬉し涙が一粒ポロリ
滲んだ文字の最初のサイン
クーアはそれを見て
「誰にも真似できないサインになったね」
と微笑みました
パタン
「ふふふ、なんか可愛いお話」
白い兎はクスクス笑いました
黒い兎は納得のいかない顔で
「なんか、意気地のない兎だなー。初めから声かければよかったんじゃないの?」
と不満気に言葉を零しました
読み終わった絵本を棚に戻し帰ってくると
白い兎がなにやら眺めて、またクスクス笑っているので
後ろから何を見ているのか覗くと
それは二匹が出会ったときの写真でした
「ねぇ?覚えてる?このときの事」
黒い兎は覚えてないと誤魔化したけれど
白い兎はしっかり覚えています
ある集まりの最中、黒い兎がなかなか周りに馴染めなくて
なんとかやり過ごそうと寝た振りをしていたところを
白い兎にまんまと見抜かれて
白い兎は周りの友達にカメラを渡して
黒い兎の肩に寄りかかって一緒に寝た振り
照れて真っ赤なほっぺたは隠すことが出来なくて
その写真の二匹は眠っているように見えて
黒い兎のほっぺただけ真っ赤
それはまるで
クーアとアールの様
二匹もわたし達みたいに幸せでありますように
白い兎は心の中でお願いしました、とさ
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
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