2012
白い兎と黒い兎
二匹はいつも一緒
そんな二匹に届いた絵本
題名は「オウジノテジョウ」
ある所に乱暴者な
兎の王子様がいました
花を折ったり、皿を割ったり
村の者を脅かしたり
それはもうひどいありさまでした
とうとう困った王様は
どうにかならないものか考えて
村の皆にある提案をしました
「王子を大人しくした者
その者の願いを一つ叶える」
村の者にこの話がひろまり
村中大騒ぎ
その日の夜が終わると同時に
我こそはという者達でお城は
あふれかえっていました
王様は一安心
これだけの人数がいれば
誰か1人くらい
王子を大人しくできるはず
だけど、王子は鼻で笑うと
次から次へと来るもの達を
めちゃくちゃに暴れて
追い返してしまいました
最初は勢いのあった村の者達も
自信を無くし帰ってしまいました
そして残ったのは三匹の兎でした
一匹は村一番の喧嘩の強い兎、ファイ
一匹は村一番頭がよい兎、マート
一匹は村一番の優しい女の子兎、テン
まずはファイが名乗り出て来ました
王子を指差し決闘を申し込んだのです
大きな体のファイに比べるといくらか
王子の体は小さく
村の者達もこれなら勝てるだろうと
決闘を眺めていましたが
ファイが飛びかかると同時に
王子はスイッチを押しました
するとファイの立っている場所が
ズドーン
落とし穴になり、ファイは一瞬の内に
穴のそこに落とされてしまいました
王子はその穴めがけて石を投げ込み
ファイが降参するまでぶつけました
こうしてファイは負けてしまい
最後は気を失ってしまいました
次にマートが王子に立ち向かいました
マートは暴力では叶わないので
運試しで勝負を挑みました
マートがどちらかの手に石を隠すので
どちらの手に石があるか当てる
ルールを伝えるとマートは石を握り
後ろで石を混ぜ始めました
マートはその時ばれない様に
石をそっとポケットにしまい
手を出した時にはどちらの手にも
石がない状態にしたのです
これでどちらを選んでも手に石は無く
王子は負けを認めることになる
何も知らない王子は出て来た手を見て
しばらく考えるとポンっと閃いた様に
ニヤッと笑うと、マートの両手を
思い切り蹴り上げました
痛みに耐えれず手を広げると
王子はその両手を見て
「どちらにも入ってない、だな?」
と答えました
こうして卑怯な王子のやり方で
マートは負けを認めることに
こうして残ったのはテンだけに
村の皆はテンが挑むのを止めました
女の子が敵う相手じゃないと
でも、テンは大丈夫、と皆に言うと
王子にある提案をしました
これから私と王子に手錠をかけて
どちらが先に根をあげるか
我慢比べをしませんか、と
こうして王子の腕とテンの腕に
手錠がはまり
我慢比べが始まりました
最初の内は早く終わらせようと
王子はやたら腕を振り回し
その度にテンは引っ張られ
転んだままさらに引っ張られたり
それはもう散々でした
ですが、テンは泣いたりしないで
王子の横暴に耐えていました
そんなある日、手錠の鎖が
何かの拍子に引っかかり
王子はドテンと転びました
よく見ると膝から血が出ています
あいたたたと苦い顔をしていると
テンがそこにやって来て
持っていたハンカチを膝に当て
血を拭いてあげました
王子は何のつもりだと怒鳴りましたが
テンはニコっと笑い
ばい菌が入ったら大変だもん、と
その日を境に王子はどうしてなかなか
調子の悪い悪戯ばかり
早く諦めさせようと思っても
なんだか心を締め付けられて
中途半端な結果ばかりに
それに加えて自分が怪我する度
助けてくれるテンに
もやもやと感じたことのない
不思議な気持ちになりました
だけど強がりな王子は素直になれず
相変わらず村の皆を困らせたり
花を折ったり、畑を荒らしたり
悲しそうな顔をするテンを見る度
後ろめたい気持ちを隠しては
わっはっはと笑って見せました
そんなある夜中、王子が目を覚ますと
外がなんだか騒がしいのです
なんのつもりだと窓の外を覗くと
そこには耐えかねた村の皆が
各々の武器を手に迫って来ます
これは困ったと王子は
テンを起こし裏口から逃げ出しました
手錠で半ば引っ張られる様なテン
どれだけ走ったでしょうか?
大きな木の下で息を切らす二匹の兎
王子は走ったせいで傷だらけ
するとテンが手当をしてくれました
あの時と同じ様に、優しく温かく
自分だって怪我してるのに
なんて自分は情けないんだろう
ありがとう、言わなくちゃ
そう思った時
「いたぞ!あそこだ!」
と言う声と共に村の者たちが
あっという間に囲まれていました
皆の怒りはとても激しくて
傷だらけのテンを見ると
さらにその怒りは大きくなりました
今にも飛び掛られそうな空気の中
「負けだ、俺の負けだ」
ついに、王子は負けを認めたのです
そして、自分を許してくれなくても
憎み続けても構わないから
せめて手錠を外すまで
それまで暴力を振るわないでくれと
テンを傷つけたくないんだと
涙ながらにお願いしました
村の皆も確かにテンの事を考えると
今石を投げたりは出来ないと思い
王子から離れました
王子は振り向いてテンを見ました
するとテンが言いました
「良かった、王子様、変われたね」
そう言ったと思うと
膝から崩れ落ちる様に
テンはその場に倒れ込みました
王子は間一髪受け止めて
はっとしました
テンの手錠が既に外れているのです
鍵なんか無いはず
あれだけ突然飛び出したのだから
テンの腕を見ると
その腕はとても細く
気付けば最初から手錠なんか
はまっていなかったんじゃないのか
じゃあ
じゃあなんで
怪我なんかする必要ないじゃないか
引っ張られたり
転んだり
今だってこんなに傷だらけになって
「王子様?お願い、聞いてくれる?」
テンが途切れ途切れになりながら
その目はまっすぐに王子を見つめて
こくこく、頷く王子
テンはカバンの中から
一枚の紙を出して
王子に渡しました
そしてにっこり、笑うと
ねむる様に目を閉じました
王子は言葉を無くし
その場に伏せると
わんわん泣きました
殺してくれ、と頼み
ありがとう、すら言えなかった事を
死ぬほど後悔しました
その姿を見た皆も辛くなり
その場を去りました
涙でぼやける視界に
写ったまる文字
テンの書いたお願いは
*
皆と仲良くするのが怖かったら
大声で叫んで欲しい。
すぐ隣に居るんだって
知らせて欲しい。
震えた体で誰かと抱き合って
1人じゃないと
教えてもらって欲しい。
すぐに笑えなくたっていい。
だって、ずっとその体で生きてきたんでしょ?
なら平気、だからこそ平気。
*
その日を境に王子は変わり
テンに言えなかったありがとうと
テンのお願いを守るために
誰よりも優しい王子様になりました
その右腕には
外される事なく
相手のない片方を垂らした
手錠をぶらさげて
ぱたん。
黒い兎は言いました
「手錠、外れてたんだね。それも最初から。なんだか切ない。」
白い兎も頷くと最後のページの
片方が垂れ下がり
片腕にだけはめられた手錠を眺めて
王子様の気持ちを考えました
1人だけの戦いみたいにしたくなくて
でも約束なんてものにしたら
まるでその瞬間最後が訪れるみたい
だから、教わった優しくする事は
まだここにあるよ、って
何度だって呼ぶんだ、って
最後なんてこない様に
この本みたいに手錠をしたら
どんなに大変だろうと二匹は話し
試しに紐で黒い兎の腕を結び
自分の腕は持つだけで結ばないで
繋がれてみました
どこに行くにもお互いに
動かないといけない
トイレだって食事だって
何から何まで一緒で、せーので
それに意外にも白い兎の
持っているだけだと
気が抜けず大変
ものの一二時間で
二匹はヘトヘトに
白い兎はあまりの苦労に
疲れてしまい眠くなりました
持っていた紐を離すと
「疲れちゃったね、おしまいにして寝よう」
と布団に向かいました
白い兎が潜るに続いて
黒い兎も布団の中へ
白い兎が黒い兎の手に
紐が付いたままなのに気付き
もう外していいんだよ?と言いました
すると黒い兎はその紐の片方を
白い兎の腕に結びつけました
白い兎は訳が分からず
どうしたのか聞くと
たった一言
「終わりまで白い兎といたい。」
ああ、きっと王子様の様に
1人になりたくなかったんだなと
白い兎は思わずふふっと笑うと
その手をぎゅっと握りました
早すぎる世界で
はぐれないように
何を引き換えにしても
ずっと一緒
白い兎と黒い兎
二匹を結ぶ、真っ赤な紐
二匹はいつも一緒
そんな二匹に届いた絵本
題名は「オウジノテジョウ」
ある所に乱暴者な
兎の王子様がいました
花を折ったり、皿を割ったり
村の者を脅かしたり
それはもうひどいありさまでした
とうとう困った王様は
どうにかならないものか考えて
村の皆にある提案をしました
「王子を大人しくした者
その者の願いを一つ叶える」
村の者にこの話がひろまり
村中大騒ぎ
その日の夜が終わると同時に
我こそはという者達でお城は
あふれかえっていました
王様は一安心
これだけの人数がいれば
誰か1人くらい
王子を大人しくできるはず
だけど、王子は鼻で笑うと
次から次へと来るもの達を
めちゃくちゃに暴れて
追い返してしまいました
最初は勢いのあった村の者達も
自信を無くし帰ってしまいました
そして残ったのは三匹の兎でした
一匹は村一番の喧嘩の強い兎、ファイ
一匹は村一番頭がよい兎、マート
一匹は村一番の優しい女の子兎、テン
まずはファイが名乗り出て来ました
王子を指差し決闘を申し込んだのです
大きな体のファイに比べるといくらか
王子の体は小さく
村の者達もこれなら勝てるだろうと
決闘を眺めていましたが
ファイが飛びかかると同時に
王子はスイッチを押しました
するとファイの立っている場所が
ズドーン
落とし穴になり、ファイは一瞬の内に
穴のそこに落とされてしまいました
王子はその穴めがけて石を投げ込み
ファイが降参するまでぶつけました
こうしてファイは負けてしまい
最後は気を失ってしまいました
次にマートが王子に立ち向かいました
マートは暴力では叶わないので
運試しで勝負を挑みました
マートがどちらかの手に石を隠すので
どちらの手に石があるか当てる
ルールを伝えるとマートは石を握り
後ろで石を混ぜ始めました
マートはその時ばれない様に
石をそっとポケットにしまい
手を出した時にはどちらの手にも
石がない状態にしたのです
これでどちらを選んでも手に石は無く
王子は負けを認めることになる
何も知らない王子は出て来た手を見て
しばらく考えるとポンっと閃いた様に
ニヤッと笑うと、マートの両手を
思い切り蹴り上げました
痛みに耐えれず手を広げると
王子はその両手を見て
「どちらにも入ってない、だな?」
と答えました
こうして卑怯な王子のやり方で
マートは負けを認めることに
こうして残ったのはテンだけに
村の皆はテンが挑むのを止めました
女の子が敵う相手じゃないと
でも、テンは大丈夫、と皆に言うと
王子にある提案をしました
これから私と王子に手錠をかけて
どちらが先に根をあげるか
我慢比べをしませんか、と
こうして王子の腕とテンの腕に
手錠がはまり
我慢比べが始まりました
最初の内は早く終わらせようと
王子はやたら腕を振り回し
その度にテンは引っ張られ
転んだままさらに引っ張られたり
それはもう散々でした
ですが、テンは泣いたりしないで
王子の横暴に耐えていました
そんなある日、手錠の鎖が
何かの拍子に引っかかり
王子はドテンと転びました
よく見ると膝から血が出ています
あいたたたと苦い顔をしていると
テンがそこにやって来て
持っていたハンカチを膝に当て
血を拭いてあげました
王子は何のつもりだと怒鳴りましたが
テンはニコっと笑い
ばい菌が入ったら大変だもん、と
その日を境に王子はどうしてなかなか
調子の悪い悪戯ばかり
早く諦めさせようと思っても
なんだか心を締め付けられて
中途半端な結果ばかりに
それに加えて自分が怪我する度
助けてくれるテンに
もやもやと感じたことのない
不思議な気持ちになりました
だけど強がりな王子は素直になれず
相変わらず村の皆を困らせたり
花を折ったり、畑を荒らしたり
悲しそうな顔をするテンを見る度
後ろめたい気持ちを隠しては
わっはっはと笑って見せました
そんなある夜中、王子が目を覚ますと
外がなんだか騒がしいのです
なんのつもりだと窓の外を覗くと
そこには耐えかねた村の皆が
各々の武器を手に迫って来ます
これは困ったと王子は
テンを起こし裏口から逃げ出しました
手錠で半ば引っ張られる様なテン
どれだけ走ったでしょうか?
大きな木の下で息を切らす二匹の兎
王子は走ったせいで傷だらけ
するとテンが手当をしてくれました
あの時と同じ様に、優しく温かく
自分だって怪我してるのに
なんて自分は情けないんだろう
ありがとう、言わなくちゃ
そう思った時
「いたぞ!あそこだ!」
と言う声と共に村の者たちが
あっという間に囲まれていました
皆の怒りはとても激しくて
傷だらけのテンを見ると
さらにその怒りは大きくなりました
今にも飛び掛られそうな空気の中
「負けだ、俺の負けだ」
ついに、王子は負けを認めたのです
そして、自分を許してくれなくても
憎み続けても構わないから
せめて手錠を外すまで
それまで暴力を振るわないでくれと
テンを傷つけたくないんだと
涙ながらにお願いしました
村の皆も確かにテンの事を考えると
今石を投げたりは出来ないと思い
王子から離れました
王子は振り向いてテンを見ました
するとテンが言いました
「良かった、王子様、変われたね」
そう言ったと思うと
膝から崩れ落ちる様に
テンはその場に倒れ込みました
王子は間一髪受け止めて
はっとしました
テンの手錠が既に外れているのです
鍵なんか無いはず
あれだけ突然飛び出したのだから
テンの腕を見ると
その腕はとても細く
気付けば最初から手錠なんか
はまっていなかったんじゃないのか
じゃあ
じゃあなんで
怪我なんかする必要ないじゃないか
引っ張られたり
転んだり
今だってこんなに傷だらけになって
「王子様?お願い、聞いてくれる?」
テンが途切れ途切れになりながら
その目はまっすぐに王子を見つめて
こくこく、頷く王子
テンはカバンの中から
一枚の紙を出して
王子に渡しました
そしてにっこり、笑うと
ねむる様に目を閉じました
王子は言葉を無くし
その場に伏せると
わんわん泣きました
殺してくれ、と頼み
ありがとう、すら言えなかった事を
死ぬほど後悔しました
その姿を見た皆も辛くなり
その場を去りました
涙でぼやける視界に
写ったまる文字
テンの書いたお願いは
*
皆と仲良くするのが怖かったら
大声で叫んで欲しい。
すぐ隣に居るんだって
知らせて欲しい。
震えた体で誰かと抱き合って
1人じゃないと
教えてもらって欲しい。
すぐに笑えなくたっていい。
だって、ずっとその体で生きてきたんでしょ?
なら平気、だからこそ平気。
*
その日を境に王子は変わり
テンに言えなかったありがとうと
テンのお願いを守るために
誰よりも優しい王子様になりました
その右腕には
外される事なく
相手のない片方を垂らした
手錠をぶらさげて
ぱたん。
黒い兎は言いました
「手錠、外れてたんだね。それも最初から。なんだか切ない。」
白い兎も頷くと最後のページの
片方が垂れ下がり
片腕にだけはめられた手錠を眺めて
王子様の気持ちを考えました
1人だけの戦いみたいにしたくなくて
でも約束なんてものにしたら
まるでその瞬間最後が訪れるみたい
だから、教わった優しくする事は
まだここにあるよ、って
何度だって呼ぶんだ、って
最後なんてこない様に
この本みたいに手錠をしたら
どんなに大変だろうと二匹は話し
試しに紐で黒い兎の腕を結び
自分の腕は持つだけで結ばないで
繋がれてみました
どこに行くにもお互いに
動かないといけない
トイレだって食事だって
何から何まで一緒で、せーので
それに意外にも白い兎の
持っているだけだと
気が抜けず大変
ものの一二時間で
二匹はヘトヘトに
白い兎はあまりの苦労に
疲れてしまい眠くなりました
持っていた紐を離すと
「疲れちゃったね、おしまいにして寝よう」
と布団に向かいました
白い兎が潜るに続いて
黒い兎も布団の中へ
白い兎が黒い兎の手に
紐が付いたままなのに気付き
もう外していいんだよ?と言いました
すると黒い兎はその紐の片方を
白い兎の腕に結びつけました
白い兎は訳が分からず
どうしたのか聞くと
たった一言
「終わりまで白い兎といたい。」
ああ、きっと王子様の様に
1人になりたくなかったんだなと
白い兎は思わずふふっと笑うと
その手をぎゅっと握りました
早すぎる世界で
はぐれないように
何を引き換えにしても
ずっと一緒
白い兎と黒い兎
二匹を結ぶ、真っ赤な紐
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