忍者ブログ

2026

0329
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012

0725
白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

いつもなら昨日には絵本が届くのに
なぜか今日になっても届かない

白い兎は言いました
「絵本、届かないね?」
部屋の隅の絵本棚には次に来る絵本の為の隙間

そんな時に聞かせてくれた
黒い兎のお話です


絵本をひらくそぶりをして、黒い兎は話し始めました

これは神様の隠した絵本のお話

あるところに、誰もいませんでした

誰もいないのだから何も起きませんでした

神様はそれを見て、ある二匹の兎をその家に住まわせました
「神様ノート」と呼ばれる名簿の中、二匹の秘密や記憶を書き直して、
それがいけないことだと知りながら

何も知らない二匹の兎は新しい家での生活を楽しんでいました
もともと仲の良かった二匹ですから
場所が変わっても今までと特に変わったこともありません

神様は使いに内緒で絵本を書いて届けるように頼みました
時に悲しく、時に優しく
使いは色々なお話を考えては二匹のいない間にそっと
絵本を置いて行きました

絵本を読んだ二匹の兎は
沢山泣いたり、沢山笑ったり
絵本と共により強くお互いの愛情を深めていきました
神様もそれを見て、とても良い気分
二匹を優しく見守りました


そんなある日、使いがいつものように絵本を届けに行くときに
一匹のヘビがやってきて言いました
「おい、神様からの命令で、今日の絵本にこれを混ぜろと言われたぞ」
背中に乗せた一枚の写真を使いに渡すと
何も疑わず使いは写真を絵本に挟みました

地に降りていつものように絵本を届ける頃
神様は頭を抱えていました
写真がないのです

家の中では一匹の兎が泣き崩れて震えています
すぐに使いを呼び、何をしたと問い詰めました

「写真を、届けただと?」

言葉を失ってその場に膝をついてしまった神様は
使いにそこで待っていろ、そう言って何かを取りに行きました

部屋の隅の小さな箱の中に眠るように置かれた一冊の絵本
それを手に取ると大きくため息
使いに手渡すと、神様は言いました
「これがなんの絵本だかわかるか?」

使いは「いいえ」と答えたので
神様はこう答えました

「世界で一番悲しい幸せのお話だよ」


黒い兎は話すのをやめました

「どうしたの?二匹の兎はどうなったの?」
白い兎が尋ねます

「どうもしないさ」
黒い兎はそれ以上は口にしませんでした


白い兎は何か隠しているのがすぐに分かって
それが自分たちの事なんだと気付きました
困る顔がこれ以上みていると辛くなるので、白い兎は顔をそむけました

無言が続いてしばらく

「ねぇ?神様はなんで絵本を隠してたのかな?」
白い兎が涙を溜めて黒い兎に問いかけます
「ねぇ、君は知ってるんじゃないの?
もしそうなら話して、ちゃんと話して、聞こえるように。
もう同じ涙を流さないように。」
言葉にした瞬間に止まらずこぼれる涙が悔しくてたまりません

こんな時にこそ、笑って抱きしめてあげなくちゃいけないのに
震えた肩で抱き合ったって、体の震えなんて止められないよ

小雨がふる外のポストにそんな時
カタン、ゴトゴト
一冊の絵本が届きました

黒い兎は言いました
「来ちゃった。
僕と君はいつでも一緒、だもんね。
一緒に読もう、これが神様が隠したその絵本だよ。」

古びた箱に入れられた一冊の絵本を取り出すと
手紙が一緒に添えられていて
宛名はありません

白い兎と黒い兎
二匹の絵本に優しい雨を




















PR

2012

0725
白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

今日も二匹に一冊の絵本

題名は「ウソノカタマリ」


嘘はついちゃだめだって

知ってるよ、知ってるんだ

それでも、つくしかなかったのは

本当がそこにあったから


一匹の兎は大事な恋人をなくしてしおれた花みたい
それを見た悪魔がしめしめと、兎に近寄り言いました

「お前が百個嘘を付いたら、その塊を俺が貰って、彼女とずっと一緒に居られるようにしてやるよ」

兎はとっても彼女が好きだったから
本当に本当に大好きだったから

毎日毎日嘘を付きました

帰ってくると悪魔がいて、ついた嘘を数えます
右手に持った小さな種が、嘘をつく度大きくなって
20個嘘をつく頃には、小さな枝が生えました

「こいつがやがて花が咲く。そしたらお前は彼女に会える」

兎の脳裏に彼女との日々

ごめんなさいとのかくれんぼ
いつまでたっても見つからないのは
もうごめんなさいがいないから

どんどんどんどん、嘘をついて
どんどんどんどん、大きくなる種

「まだまだもっと嘘をつけ。でないと彼女は帰ってこないぞ?」

悪魔が兎の背中を押します
真っ黒な尻尾はくるくると回り、まるで催眠術のよう

兎の目には彼女のまぼろし
部屋には彼女が帰ってくる日の為に
向かいに置かれた彼女の椅子

兎は冷たい椅子を抱きしめて
わんわんわんわん泣きました
「あぁ、苦しいよ。苦しいよ。それでも君に逢いたいよ」
涙で濡れた長い睫毛
撫でる手はあと嘘幾つ?

眠れない夜が続きました
食べられない日が続きました

それでも悪魔が待っている
そして彼女が待っている

やつれた体を隠す為
兎は黒いマントを買いました

けれどもそれがダメでした
皆がどんどん怖がって、なかなか嘘がつけません
兎は遠くに旅支度
知らない兎を騙すことにしました

それから何年、月日が流れて
太陽も月も星も雲も草も花も兎も
何もかもが大人からおじいさんになりました
兎は刻まれたシワに触れて思いました

幾つ嘘をついただろう?
種はもうじき花が咲くかな?
悪魔はどんな顔してるかな?
僕は何がしたかったんだ?

悪魔がそっと囁きました
「見ろ、もうじき花が咲く、彼女と一緒に居られるぞ」

そうだ、彼女が帰ってくるんだ
彼女に会いたくて嘘ついたんだ
ところで彼女ってどんなだった?
それより、彼女ってだれなんだ?
あれ、僕は誰なんだ?

悪魔が兎に聞きました
「お前、彼女を忘れてしまったのか?」

最後の嘘は悲しい程、兎が欲しかった一つの本当

散らかる部屋にキラキラ光る
冷たい椅子と黒い花

ぱたん


残酷で、冷たいお話
心を締め付ける思いで、二匹はその本を閉じました

中には古く褪せた写真が一枚
顔はぼやけて見えないけれども、どこか懐かしいのです

どうして懐かしいのか、どこで見かけたのか
思い出そうとはするけれども
どうにも思い出せません

黒い兎は写真を気味悪がって
白い兎から取り上げると
びりびり、びりびり
ちぎってゴミ箱に捨てました

本もそのまま、気分が悪いと
ご飯も食べずに布団に潜ったら
白い兎はひとりぼっちになりました

ゴミ箱の中からもう一度、散り散りになった写真を拾って
重ね合わせて見てみるけれど
やっぱりどうして思い出せなくて
無理に思い出そうとすると頭が痛くなりました

ずきずきと痛む頭を抱えてベットの布団に潜りこみました
隣で震える黒い兎
白い兎は聞きました
「どうしてそんなに震えてるの?」

黒い兎の手を掴むと
熱い体温、冷たい涙
言葉にできない何かに押しつぶされて
その体が震えていました

こんなに怖がる姿を見た事なんて

今まで一度も

今まで一度も?

白い兎は何かを思い出しそうになって
それがとても怖いものに思えて
黒い兎の手を強く握りました

「大丈夫、大丈夫、いつも一緒。ご飯も一緒、遊ぶも。眠るも。」

二匹はいつもより強く握り締めた手を離さないように
過ごした時間を確かめるように

涙が止まるまでたくさん泣きました

二匹の目は涙の中で真っ赤に真っ赤に色を染めました


白い兎と黒い兎

二匹は一緒、遊ぶも眠るも、泣くも笑うも

2012

0725
白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

今日も二匹に一冊の絵本が届きました

題名は「オモイデモノオキ」

それはそれはむかしむかし

小さな小さな命が一つ

たった一つの思い出を守る為の冒険のお話

メルと呼ばれたその兎には、病気で物をすぐに忘れてしまうお母さん兎がいました

大事なお母さん兎の為に一生懸命努力したけれども

最後はメルの名前も忘れて、死んでしまいました


そんなメルの宝物は小さな箱に並べられた5つのリボン

これはお母さん兎がまだ元気だった頃ご褒美で貰ったもの

大事な大事なメルのお母さん兎との思い出でした


メルは自分の名前すら忘れてしまったお母さん兎を知っているので

自分もいつか忘れてしまうんじゃないかと心配になって

その箱を脇に抱えるとある噂を信じて飛び出しました

ーこの世のどこかに思い出をしまっておける物置がある。そこに入れた思い出はいつまでも消えず、いつでも、見に来るたびに思い出すことができるー

話では山の向こう、その先の沼の奥の洞穴の中

危険な事もあって普段は誰も近寄らない場所だそう

それでもメルには行くしかありませんでした


初めて入った山に向かう森の中は腐った気がそのままにされていたり

気持ち悪い虫や見たこともない動物だらけ

メルはすぐにこの森を抜けようと先を急ぎました

もうすぐ森を抜けルだろうと言う頃に

「ちょっと待ってくれないか?」

メルは誰かに呼び止められました

振り返るとそこには一匹のカラスがいました

見るとそのカラスは足を折ってしまって片足でぴょんぴょん

フラフラとして飛ぶこともできずにいました

言葉少なくても助けてあげたい気持ちになったメルは必死に看病しました

折れた足を固定する木を当てて、周りを見渡したけれど紐がありません

小さな箱の中には大切なリボン

メルは悩んだ挙句、カラスの為に一本だけリボンを使うことにしました


丁寧な看病のおかげで飛べるようになったカラスはお礼をしたいと

メルを片足で掴むとバタバタと羽根を震わせてメルを森の外まで運んでくれました

まだ痛んだ足ではうまく飛べず、それでも気持ちが嬉しかったメルはありがとうとお礼を言うと

リボンはあげることにして先を急ぎました


山は森に比べて景色は綺麗だけれども、危険は沢山

崩れやすい足場に、時折降る雨、空気も薄くてメルはぜーはーぜーはー

まだまだてっぺんは雲の中

気付けば夜も遅くなったので、今日はここで休もうと

メルは見つけた小さな洞穴に入るとその中で丸くなって眠る事にしました


すやすやと眠っていると

ごろごろごろ どがー!

大きな音で目を覚まして、外へ飛び出すと目の前には岩の山

崩れた岩が落ちてきて、道を塞いでしまいました

まだまだ先は長いのに、どうしたら良いのだろうと

メルは頭を抱えて悩みました

そんな足元を見ると岩の間に一匹のモグラがぐったりとしていました

岩の間に挟まれて動けなくなっているのを見てメルはその岩に手を伸ばしました

けれどもうちょっとの所で届かない

困ったメルは仕方なく、箱の中から黄色のリボンを取り出して

もうちょっとの距離をリボンで繋いで、モグラをひっぱりだしました

モグラは岩から抜け出ると、お礼に穴を掘って道を作ってくれました

大事なリボンは岩の中から引っ張る中でびりびりで、泥だらけ

そのままモグラにリボンをあげると、メルは先を急ぎました


山を下るともうすぐに沼が見えてきました

ジメジメとして空気も重たく、見渡すところにナメクジとカビだらけ

それを食べる変な色をしたマムシもうようよ

気持ち悪いのと怖いのでなかなか前に進めないでいると

前からカエルの夫婦がやってきました

見ると腕に二つの葉型がくっきりと

すぐにマムシに咬まれたのだと思ったメルは

もう迷うこともなく、箱の中の青と緑のリボンを取り出して

咬まれた腕から毒が回らないように、二匹の腕にきつく巻きつけて

傷口を吸い上げて毒を吐き出しました

しばらくして大分楽になったカエルの夫婦は、実は洞穴から帰るところで

お礼に、洞穴の場所を教えてくれました


辿りついた洞穴の中はひんやりとして疲れた体を優しく風が揺らします

ぽつんぽつんと落ちる水滴に垂れ下がった石の塊

その奥の奥に、ひときわ輝く小さな明かりを見つけてメルは引き寄せられるように、その場所へ向かいました

そこにはほこりを被った思い出だったであろうものが溢れていました

洋服や手紙、鍵付きの箱にきらきら輝く名前入りの指輪

だったもの

メルが見たのはその思い出がゴミのように詰まれた光景でした

光の下に集うホタル達が唄います

「思い出残しにやってきて、残した事を忘れたよ。なんて哀れな事でしょう?
森抜け、山越え、沼渡り。こんなに大変だったのに。それでもみんな忘れてく。
思い出すのはいつの日か?思い出すのはいつの日か。」

とても酷い歌でしたが、この景気にはぴったり

メルは箱を握り締めて泣き出してしまいました

零れた涙が箱に落ちると、メルにある思い出が飛び出しました


お母さん兎が一生懸命手帳に一日の事を書く姿

料理の最中に噴出した鍋を触って火傷して涙する姿

メルの名前を忘れないように、名前を何度も呼ぶ姿


思い出を一生懸命覚えていてもらおうと傍で支えるメル

それに答えるように満面の笑顔でリボンを渡すお母さん兎


絶えられなくて家を飛び出したメルに

帰って来て「忘れてしまおうね」と言って泣いて笑ったお母さん兎


一本のリボン詰められた思い出はきらきらと輝いて見えました

涙を拭いたメルが他の想い出に触れると

皆の思い出が同じようにきらきら輝きながら浮かんでは消えました


どんなに小さな想い出にも込められた思いがあるのなら

いつかきっと、この思いを返したいと、メルは一生懸命その思い出をメモに書き留めました

受け取り手のいない思い出だとしてもそれは変りません

メルは自分の命をここで過ごし、思い出を残すことに決めたのです


ヘトヘトになりながらも、一つ一つの思い出を書き残し

やがて何年の時間がすぎ、メルはやがておじいさんになりました


そして、最後にふれた思い出にメルは涙が止まりませんでした

一枚の手紙に込められた思い出

そこに映ったものは、おなかを撫でてにっこりと微笑むお母さん兎だったのです

ちぎれてぼろぼろで、字も読めないような手紙には

ここに来たお母さん兎の。覚えていけないと分かっても残しておきたかった

なによりも大事な思い出が残っていました

「母さんの思い出は全部消えてしまうものだとしても、もうそれで仕方なかったって。
僕、本当はすごく我慢してたんだよ。僕の名前も忘れた時に、僕はもういないと思ってた。
でも、僕はここにいたんだね。いて良かったんだね。僕は最後まで母さんと一緒にいれたんだね。」

沢山の思い出の詰まったメモ帳を抱えて、メルはその場で眠るように死にました

最後の思い出をメモでなく心に書き留めて

洞窟で骨になったメルはやがて砂のようにさらさらと崩れて形をなくし

残ったメモ達だけが残りました

それを一匹の兎が見つけて、思い出辞典として大事に村に置かれました


メモに込められた思い出には皆に思い出を伝えようと、ひたむきにもくもくと

映し出された記憶のかけらを幸せそうに眺める、一匹の兎が映っていましたとさ

おしまい


ぱたん


読み終わった絵本を抱えると、黒い兎は本棚に並ぶ沢山の絵本を眺めながら思いました


もう、何冊の絵本を白い兎と見てきただろう

沢山の絵本に感動して泣いて笑って

時には絵本のページを破ったり

絵本に絵を書き足したり

一緒に舐めた飴玉の味や広がるオーロラ

白と黒の花の絵にペンキの付いた顔

お互いのいいところも悪いところも沢山知ったよね

こんなに沢山の思い出を僕はちゃんと残せていけるかな?

白い兎はそれを覚えていてくれるかな?

一緒にどれだけ分かち合えるかな?

このまま変わらずにいたいけれど

僕たちもいつか変わっていくのかな

それとももう変わっているのかな?


いつもと変わらず料理を作る白い背中は

黒い兎を少しだけほっとさせました

のんびりと流れる時間の中で二匹一緒に過ごして

変わらないものが変わるまで

きっとこのままなんだろうと

見つめる目に映る今は変わらないこの光景をもっと大事にしていこうと


白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

そう信じた変わるはずのない今日を覚えて

変わり始める明日が来ることを忘れようとして

2012

0725
白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

今日も二匹の元に一冊の絵本

題名は「カミサマノイウトオリ」


あるところにチャムという一匹の兎がいました

彼は小さい頃から神様の存在を信じていて

お告げと言っては周りの兎にも迷惑をかけていました


兎達は言います
「神様なんていないよ」
チャムはしかめ面で答えます
「そんな事言っていると天から罰が下るんだ。お前らきっと酷いことがおきるぞ」

そう言っておしまいなら良いのですが

チャムはその後必ず、神様を馬鹿にした兎にいたずらを仕掛けるのです

石を窓にぶつけたり、怪我をさせたり、大事にしているものを奪ったり

それはもう困ったものでした

一度は見つかって怒られたことはあったのですが

「これは神様のお告げなんだ、僕は神様に言われたとおりにしただけ」

と、周りが飽きれるまで言い続けました


兎達は困り果てて、どうにかならないか話し合い、一つの作戦をたてました

次の日の朝、一枚のはがきがチャムのポストに入っていました

中を開いてみるとこう書かれていました

「南の村に続く道で、あなたを待っています。途中で私の使いがいます。彼らの言う事を聞いてください」

読み終えてびっくり仰天、嬉しくて天井に頭をぶつける位高くジャンプしました

すぐに荷物をバッグに詰め込むと、一番のお気に入りの白いローブを羽織って外に飛び出しました


南に行く道をテクテクと歩いていると一匹の兎に出会いました

その兎もチャムと同じように白いローブを羽織っていたので、もしかしたらと思い声をかけました

「もしかしたら、神様の使いですか?」

きらきらと目を輝かせたチャムに、使いと名乗る兎はただ静かに頷くと一枚の紙を渡しました

紙には「ローブは捨てていきなさい」とだけ書かれていました

きっとこのままじゃ使いと間違えてしまうからだろう、そう思って喜んで脱ぐと使いに渡しました


さらに歩いていくと、今度は黒いローブを羽織った兎に出逢いました

これも、使いなのだろうと思ったチャムはぺこりと頭を下げて挨拶をしました

すると、二匹目の使いもまた、チャムに一枚の紙を渡しました

そこには「そこにある水をかぶりなさい」と書かれていました

見るとバケツに沢山の水が入っています

神様に会う前の清めの水だと信じてバケツを掴むと頭の上から水をかぶりました

大量の水に濡れたまま、使いに感謝をするとチャムは先を急ぎました

段々と村から離れて、風も冷たくなってくるとチャムはぶるぶると震えが止まらなくなってきました

さっきの水で冷えてしまったのです

行けども行けども神様は見当たらず、とうとう村が見えなくなり、気が付くと外は真っ暗になってしまいました

帰り道も分からなくなって、兎はその場にうずくまると、必死で自分の体を温めながら神様に祈りました

「神様、どこにいらっしゃるんですか?私はここにいます!」


もちろん返事はありません

なにせ、受け取ったはがきも、使いのものも全部村の兎たちの嘘なのだから

神様を信じ過ぎて、その神様を疑わなかったチャムはまんまと騙されてしまったのです


チャムはがんがんと響く頭の痛みと震えにタ耐えながらちょっとだけ、神様の悪口を言いました

「全部あなたの為に、僕が毎日祈ってきた日々も、近づく為に我慢した自由も全部ご存知のはずなのに」

地面の土を握り締めて、悔しそうに涙を零しました

薄れてく意識の中でどこからともなく声が聞こえてきました

「私はいつでもあなたを見ています、だからこうなったのです」

ああ、なるほど

村の兎の仕返しと気付いた時には、もう遅く

自分の行いが返って来たのだと気付いたチャムの最後の言葉は

「カミサマノイウトオリ」


ぱたん


白い兎は首をかしげて黒い兎に聞きました

「神様って、こんなに意地の悪いものなのかな?」

助けてあげればいいのに、仲直りさせる事だってできたのに

白い兎はそう思ったのです

黒い兎は答えます

「僕はこれで良かったんだと思うよ」

黒い兎が言うには

神様がもし助けてしまったら

他にも困った兎を助けなくちゃいけなくなる

そんなことになったら皆甘えん坊になってしまって

困るまで誰も努力しなくなっちゃう、ということでした


誰より甘えん坊だと思っていた黒い兎が、意外にそんなことを考えていたんだと

白い兎は少しびっくりしました


「神様、みていますか?僕は、この先どんな事があっても、自分で決めた白い兎と幸せになるからね☆ 神様は安心して見てていいんだからね!」

ぎゅっと白い兎の手を握りしめて、黒い兎は空に向かって誓いました


顔を赤くした白い兎はもじもじしながら

「プロポーズのつもり?」

と聞くと

黒い兎は熱くなって言った自分にはっと気付いて

照れながらこくんと頷きました


白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒


2012

0725
白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒

今日も二匹のもとに一冊の絵本

題名は「スマイルトヤマイル」

あるところに一匹の兎がいました

どんな時も笑顔で前向き

周りの皆もつられてニコニコ

皆は彼の事を「スマイル」と呼びました


そんなスマイルの住む村の外れの暗い森の中には一匹の悪魔が住んでいました

彼は、世界で一番笑顔が大嫌い

だから、笑顔になったら最後、呪いをかけられて命を取られてしまう

そんな噂が広まり、村の皆は彼の事を「ヤマイル」と呼びました


「なんてむかつく顔してやがるんだ、見てるだけで胃がムカムカしてきやがる」

ふらーっと外なんかに出なきゃよかった、とヤマイルは後悔しながらつぶやきました

今までいろんな笑顔を見てきたけれども、あんなに不愉快な笑顔ははじめて見たと

すぐにヤマイルは笑顔を奪うためにいたずらを仕掛けることにしました


草むらに身を潜めてスマイルを待つと

コロコロコロ コロコロ

タイミング良く石ころに転がしました

スマイルは勢いよくつまづいて地面にごっつんこ

それを見てヤマイルは大喜び

「さぁ、泣け。痛くて笑っていられないだろう?」

けれど、起き上ったスマイルはニコニコ

「良かった、ほかの誰かがつまづく前に気付けて」

草むらに投げ返した石ころはヤマイルのほうへ飛んでいき

よろけたヤマイルは膝をすりむいてしまいました


「あいつだけは絶対許せない、こうなったらあいつをこの世から消してやる」

怒ったヤマイルは呪いを使うことにしました


家に戻ってきたスマイルが夕食の準備をしているのを見つけると

ヤマイルは兎のおばあさんに変身して、家のチャイムを鳴らしました

ドアを開けてでてきたスマイルはいつものようにニコニコ


「すまないけれども水を一杯もらえないかね、遠くから歩いてきたんだけれども、もう喉がからからで」

困った様子で頼むと、スマイルは快くヤマイルを家の中に招きました

憎たらしいほどの笑顔にヤマイルは吐き気を抑えると、ひきつった笑顔を返して中に入って行きました

家の中はたくさんのもので溢れていて、全部村の兎たちがくれたのだとスマイルは教えてくれました

さっきの転んだ足が痛くてよろよろと歩いているのを見たスマイルはそれに気づいて言いました

「おばあさん、けがをしてるのではないですか?今手当しますからそこに座っていてください」

すぐにばんそうこうとお水を持ってスマイルはやってきました

足に触れようとした手を、とっさにヤマイルは振り払ってしまい

あわてて彼にこう言いました
「水だけで結構じゃ、そんなことまでされては申し訳ない」

もらった水を一口飲むと、お礼にこれをあげよう、と

にやりと笑うと呪文を唱えました

「笑顔にチャック、病のチャック、開けたら最後、体がぼろぼろ」

スマイルの周りを黒い煙が一瞬あらわれて彼を包み込みました

スマイルの首筋には黒い斑点のような模様がひとつ

ヤマイルは変身を解いて悪魔の姿になると呪いをかけたことを伝えました

「この呪いがかかったら最後、お前が笑うたびに病気がお前を苦しめていく。助かりたかったら、今後はずっと笑わないことだな」

やってやったと満足気なヤマイルにスマイルは近寄って

ばんそうこうを渡して言いました

「教えてくれてありがとう、ばんそうこうちゃんと貼ってくださいね、でないと傷ひどくなりますから」

呪いのせいで胸がぎゅっと苦しくなりながらも、それでもスマイルは笑顔でばんそうこうを差し出しました

ヤマイルはばんそうこうを受け取ることなくその場から去って行くと、離れた場所で頭を抱えました

「なんなんだ、あいつは。気持ち悪い、どうかしてやがる」

とはいえ、これでもう笑顔を見ないで済むのでほっとしました

さすがのスマイルも、さすがに命のが大事だろうと思ったのです


ところがあくる日、ヤマイルが目にしたのはいつもと同じようにニコニコと笑うスマイルでした

呪いがかかっていないんじゃないかと思う位、普段通りの姿を見て

思わず、ヤマイルは目をごしごしとこすり、何度も確かめなおしたほどです


きっと嘘をついていて家に帰ったら相当苦しんでいるのだろうと

先回りして、ヤマイルは家の中にこっそり入って隠れて待つことにしました

しばらくして、スマイルが帰ってきました

苦しむ姿を一目見てやろうと部屋の奥からのぞきこみました

額から冷や汗をかきながら苦しそうにするスマイルを見てヤマイルは舌なめずり


「思ったとおりだ。さっさと笑う事なんか諦めちまえ。」

ヤマイルは一日も早く、憎いスマイルが笑わなくなるのを楽しみにして部屋を出て行きました


しかし、それから何日もの間、スマイルの様子を見てびっくり

悪くなるどころか、どんどん元気になっていくではありませんか

とうとうヤマイルは直接、スマイルに会いに行くことにしました

ドアをノックせず勢いよく開けると

驚いたスマイルの首根っこを掴んで聞きました

「どうして笑っていられる?呪いは確かにかかったはずだ、お前の首筋にかけた呪いの痕だって」

首筋をみると、呪いをかけた痕が消えています

もうこうなると、わけがわからなくて、ヤマイルはその場にしゃがみこんでしまいました

スマイルは言いました

「こんばんわ、あくまさん。けが、良くなったみたいでよかったですね」

続けてこう言いました

「呪い、かかってましたよ、あの時は苦しくて苦しくて、どうにかなりそうでした。でもこれを見てたら笑えないほうがもっと苦しく思えて。」

スマイルが案内した部屋にはたくさんのみんなと撮った写真が飾られていました

どれも本当にうれしそうにニコニコと笑った写真ばかり

あくまはあまりの気持ち悪さに目をそむけました

「誰かの為に笑ったこともあった。自分の為に笑ったこともあった。でも結局自分の為には誰かの為になった。僕の笑顔はただそれだけで、でもそれだけで十分だったんです。それに気づいたら、すっと体が軽くなりました。あくまさんの呪いも、いつのまにかなくなってました。改めて気づかせてくれてむしろ感謝しています。」

ヤマイルは素直に負けを認めるしかありませんでした

「こんな事初めてだ。なんなんだ、お前は。もう、なんだかばかばかしくて笑えてくるわ」

クククと笑うヤマイルにスマイルが手を伸ばして、その手を掴むと満面の笑みで言いました

「あくまさん、あなただって笑えるじゃないですか。今の顔とっても笑えますよ」

鏡に映る自分はなんとも情けない、笑える顔をしていて

心はなんだかスカッと、どうしようもないくらい輝いた太陽みたいなスマイルに照らされた青空の様でした

ヤマイルは思わず声をあげて大笑いしました

スマイルもそれを見て一緒に大笑い

その後スマイルは幸せに暮らして

ヤマイルは奪った笑顔を返す旅にでましたとさ

おしまい


ぱたん


白い兎は本を閉じて黒い兎に手渡すと料理の準備を始めました

今日のメニューは黒い兎の大好きなものばかり

テーブルの上に並べると黒い兎は目を輝かせて大喜び

「いただきます!」

黒い兎は次々とお皿のメニューを口の中へ

あっと言う間に料理をたいらげると

「とってもおいしい!ありがとう」

ソースを口につけて満面の笑みを見て、白い兎は思いました

何気なく作っている料理は君を喜ばせるためになって

その料理のソースまみれの笑顔は私の為になる

誰かの為にが自分の為にってこういうことだよね


白い兎は心の中で

君のためなら私の全部あげてもいいかな、なんて。


口には出せず、なんだか照れくさくなって顔を赤らめていると


「ちょうだい?」


黒い兎の言葉で白い兎のほっぺたはまっかっか

思わず

「なに言ってるの?思っただけだって!」

大慌てで否定した白い兎が見たのは

フォークを咥えて目の前のお皿の料理をほしがる

きょとんとした黒い兎でした


白い兎と黒い兎

二匹はいつも一緒


カレンダー
02 2026/03 04
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
プロフィール
HN:
No Name Ninja
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
アーカイブ
P R
忍者ブログ [PR]
* Template by TMP